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作品名:今日も杏とて。out of numbers.2 作者:ジン 竜珠

第3回
「社長さん、あなた、随分と恨まれてますね。生き霊の集合体っていうのは、その恨みの『念』ですよ?」
 ……なんだと?
「企業活動がどうとか、市場原理がこうとか、ていうのは、俺にはわからないんで、触れません。でも、あなた、『人』としてやったらいけないことをしたんじゃないですか? その恨みの矛先が、あなたじゃなくて、息子さんに向いたんです。息子さん、視る限り、優しい方のようです。だから、その恨みの念を受け止めてしまった」
「何を言ってるんだ、キサマ? 仕事をする気があるのか、ないのか! どっちだ!?」
「よくあるんですよ、恨みの念が、その本人じゃなく、そのお身内に現れるって」
 本当に何を言っているのか、この小僧は?
「その恨みをそらそうと、亡くなった方……この感じだと、息子さんに非常に近しい方ですね。その死霊がやって来た。でも、その霊の力だけでは抑えきれない。そこで、別の生き霊……え、と、お名前は、ヨシ、……ヨシミさん、という方ですが、その方が死霊の助力に現れた。……あくまでも、ここで感じる限りです。その死霊も、ヨシミさんも、潤一郎さんにとって、『お母さま』と呼べる方ではないですか? おそらく血の繋がりがあるのは、死霊の方」
 私は、何も言えなかった。この小僧はおろか、あの小娘どもにも、芳美が後妻だとは伝えていない。
 だが、潤一郎を苦しめるモノの正体がわかったなら、話は早い。
 その生き霊を消せばいいのだ!
「なら、早く、その恨みの念とやらを、消せ! それが、キサマの仕事だ!」
 私がそう言うと、小僧が溜息をついた。
「社長さん、今の話、聞いてましたか? あなたが『元凶』なんですよ? 今、ここで、恨みの念を祓っても、次から次へと湧いてきます。それを、あなたが受け止めればいいけど、残念ながら、息子さんに向いてしまうようだ」
「なら! 私にどうしろと言うんだ!」
「さあ? さっきも言ったけど、俺には、企業活動がどうのこうのっていうのはわかりません」
「無責任だぞ、キサマ!」
 私の血圧が上がった。クラクラしてきた。
「もういい! よそに頼む!」
 あの小娘どもを「もの」にするのは、またの機会にしよう! とにかく、その恨みとやらを、消滅させればいいんだ!
「大体、潤一郎の精神が惰弱だから、こんなことになるんだ! 恨みの念など、跳ね飛ばせ! 優しさなど、商売人には不要なのだ! 真佐子(まさこ)も芳美も、潤一郎を護るのなら、しっかりと護れ! それでも、私の妻か!」
 突然、小僧の顔つきが険しくなった。そして、突然、こんなことを言った。
「社長さん、俺の本業、実はバケモノ退治なんですよ」
「? いきなり、何を言っているのだ、キサマ?」
「だから。俺、バケモノ退治が、元々の任務なんです。……あんた、本物の化け物だわ」
 小僧が、拳(こぶし)を構える。殺気を感じて、私は、岩崎に言った。
「い、岩崎、この小僧を叩き出せ!」
 岩崎は、なぜか、苦虫を噛みつぶしたような顔で私を見ていたが、突然、笑顔になって言った。
「すみません、社長。私、社長と同じで、勝てる喧嘩しかしない主義なんです」
「岩崎? 何を言って……」
 その時、誰かが私の肩を叩いた。
 振り返ると、小僧が、拳を向けてくるところだった。


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