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作品名:今日も杏とて。out of numbers.2 作者:ジン 竜珠

第2回
 そこには、バイトの小娘しかいなかったが、どうやら、ただ者ではないらしい。というのも、私がやってくるのを、前もって知っていた節があるのだ。私がここに来たのは、本当に偶然だ。だから、それを察知したということは、それなりに能力があるということだろう。
 だが、それより。
 この二人、上玉だ。
 そこで、私はこの二人に、我が家の怪現象の解決を依頼した。確かに私が来ることを、前もって知ることができたぐらいだから、それなりに霊感はあるのだろうが、所詮は小娘だ。なにもできんに決まっている。
 だから、それを利用してやろう。「何も解決しなかったじゃないか!」と、クレームをつけ……。
 あとは、クドクド言うこともあるまい。私のこの「テクニック」をもってすれば、このような小娘を絶頂に持っていくぐらい……。
 いや、嫌がるのを力尽くで、というのも、たまにはいいかもしれん。

「社長、お見えになりました」
 ボディーガードの岩崎が、書斎にいる私を呼びに来たのは、土曜日の午後八時だ。この日、この時間を指定したのは、私だ。今日のこの時間、妻の芳美(よしみ)は、市内の企業連合会の集まりに、私の名代で行かせて、留守にしているからな。さすがに、妻がいる前で、あの娘どもをオトスのは、気が引ける。このような「気遣い」をしてしまうあたり、私もまだまだ、修行が足りない。
 何にせよ、今日のところは、伏線だ。明日辺りにでも、苦情をネジ込むことにしよう。
 そう思って、玄関に行くと、そこにいたのは、男だ。高校生だろうか。俗に言うイケメンだ。
「なんだ、キサマ? キサマのような小僧を呼んだ覚えはないが?」
 私の言葉に、小僧が言った。
「自分、『心域の砦』の外注でやって来た、祓魔士(ふつまし)で、天宮竜輝(あまみや りゅうき)と申します」
 外注? あの二人が来るんじゃないのか? そんなこと、一言も……。
 まあ、いい。予定が少し変わっただけだ。
 こいつが無能だったってことをネジ込みに行って、あの小娘どもを引きずり出して……。
 そう思い直し、私は、その小僧を家に上げた。

 小僧は、潤一郎の部屋に行って、眉根にしわを寄せ、こんなことを呟いた。
「ややこしいことになってやがんなあ。また、杏(きょう)さんに、やられたか」
「杏さん」。あの相談所にいた、髪の長い方の娘だな。
 そう思っていたら、小僧が私を見た。
「杏さん、……『心域の砦』の人には、こう言われたんです。生き霊と死霊が関わっている。自分は生き霊の方をなんとかするから、俺には死霊の方をなんとかして欲しい、って。でも、どっちも、ここにいますね」
 なんだ、こいつ? 何を言っている?
 私が不思議そうな顔をしたからだろうか、小僧が、少しだけ考える風をしてから、言った。
「ある『生き霊』……正確には、その集合体ですが、そのせいで、息子さんが精神のバランスを崩した。それをどうにかしようと死霊がやって来たが、力が足りない。その死霊を手伝おうと、違う生き霊がやって来て、それでどうにか、バランスを保っている、ってところですかね」
 本当に、何を訳のわからないことを言っているのだ、この小僧は?
 小僧が、突然、真面目な顔になって言った。


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