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作品名:今日も杏とて。out of numbers.2 作者:ジン 竜珠

第1回
 我が「本島(もとしま)総合ステーショナリー」は、それなりに大きな会社だ。県庁所在地に本社を置き、隣の千京市どころかこの国全域で一大勢力を持っている、コングロマリットの「ミハシラ・コーポレーション」と比べたら、はるかに小規模だが、それでも市内に直営店舗を二つ、県内にあと、三つ展開しているのは、十分、大企業の証であるといえるだろう。
 なに? 私の成功の秘訣を聞きたい? 教えられるわけはないだろう。だが、一つだけ言っておくと、情けは一切、無用、ということだ。相手が弱っているのを見かけたら、容赦する必要はない、叩き潰せばいい。たとえそれでトップが首をくくろうと、社員が路頭に迷って、何人か死ぬようなことになろうと、それにともなって、その関連企業が苦境に陥ろうと、構うことはない。大体、それが企業を経営する、ということなのだ! 負ける方が悪い! そんな軟弱な姿勢なんだったら、最初から、商売など、するなというのだ!
 そう、法に触れなければ、いいのだ。それが、現実というもの。
 プライベートでは、十年前に妻には先立たれたが、八年前に、五歳年下、今年、四十五歳になる美しい後妻を迎えた。今のところ、社にも問題はない。
 ……いや、問題がないというわけでもない。
 息子の潤一郎(じゅんいちろう)のことだ。あいつには、私のあとを継がせたいと思っているが、どうも、ナヨナヨとしている。亡き妻に似たようだ。社員のことを気遣うのはいいが、そんなことに腐心しているようでは、上に立つ資格などない! 社員はあくまで「歯車」なのだ。油をさす必要はあるが、いちいち気に掛ける必要がどこにある? もし使えなくなったら、その部品は取り替えればいいだけのことなのだ!
 そんな軟弱ものだからだろうか、しばらく前からおかしい。最初は風邪だろうと、私も妻も思っていた。妻の芳美(よしみ)などは、血が繋がっていないにもかかわらず、親身になって看病をしている。だが、どうやら、心身症らしい、ということになり、最近では、もっと別のことではないか、と思うようになった。
 有り体に言えば、霊障だ。
 そんなものは信じていなかったが。
 最初は、奇妙な「音」だった。
 軽く壁を叩くような音に始まり、天井裏を這うような音、さらには、空気中で何かが破裂するような音まで響くようになった。
 それだけなら、家鳴りの類いですませたろう。だが、変な黒い影、浮遊する光る玉、壁の上を走る人影を目撃し、遂に、人の手としか表現できないものが、寝ている潤一郎の上を漂っているのを見た時には、これはただ事ではないと、私でさえ思った。
 そこで、知り合いの霊能師に除霊を頼んだが、まったく効果はない。
 そんな時、たまたま訪れた千京市で見かけたのだ。
「スピリチュアル相談所」というのを。


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