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作品名:会長の探偵物語4 作者:ジン 竜珠

最終回 後編
「まあ、すぐに犯人が捕まるわね。決定的な証拠、持って帰っちゃったし」
 電話を終えた僕に、会長がそんなことを言った。
 え? 決定的な証拠?
 僕が首を傾げると、会長が驚いたような表情で僕を見た。
 それはまるで、「本当に気がついてないの?」って言ってるようにも、「どうしてこんな簡単なことに気づけないの?」って言ってるようにも見える。
 僕は素直に言った。
「すみません、何が何だかわかりません」
 その言葉に溜息をついた会長が、解説を始めた。
「流しのところに、水たまりができていて、乾いた形跡があるわ。計ったら、長径四センチのものが、長径二センチぐらいになってる。はっきりと部分的に乾いた痕跡が残ってるっていうことは、多分、油汚れを含んだ水が、飛び散ったのね。蒸発して、このぐらいになるまで、大体、二時間程度かかるの。ということは、二時間ぐらい前に、誰かが、流しで、何かを洗ったってこと。でも」
 と、会長が御遺体を見る。
「御遺体の硬直状態から見て、被害者は、亡くなってから三時間以上経ってる。ということは。わかるわよね?」
 僕は頷いた。
「被害者が亡くなってから、何ものかが、流しで洗いものをした。そして、それは犯人だ、ていうことですね? 誰かの御遺体があるのに、警察に通報もせず、洗いものをするっていうことは、事件関係者以外に考えられないから」
 会長が頷いた。
 やった! なんか、試験に合格した気分だ!
 会長が、僕のあとを続ける。
「テーブルの状況から考えて、犯人は被害者と一緒に昼食をとっていたと思われる。そして何らかの事情、多分、偶発的な何かで、被害者を殺害。ここから立ち去ったものの、食事をしていたことを思い出し、ここへ帰って来た。事件が発覚していないことを知り、自分の食器類を洗った。多分、何らかの痕跡が残ってたんでしょうね」
 多分、そうだろう。でも、そうだとしたら、証拠が残ってない可能性がある。アリバイとか目撃情報なんかで犯人がわかるかも知れないけど、そうじゃない可能性もあるから、すぐに犯人が捕まるなんて、楽観的すぎないかな?
 そんなことを言うと、会長がまた、驚いたように目を丸くした。
「今、言ったわよ、『決定的な証拠を持ち帰ってる』って!」
 ……決定的な証拠? 僕は周囲を見渡した。でも、この部屋に来るのは初めてだから、何かがなくなってるかどうか、なんて、わからない。それは、会長も同じはず。
 なんで、断言できるんだろう?
 僕が答えられないでいると、会長が、流しを見た。
「油汚れのついたものを洗ったのよ? だったら、ここで食事をとったっていうこと」
 それは、わかる。食事を取ったことを思い出して、犯人が「まずい」って思って、戻ってきて、自分が使った食器を洗って、乾燥機を使わずに、ふきんかなんかで水分を拭き取って、食器棚に戻したんだろうな、っていうこともわかる。会長が食器棚を見て、頷いたってことは、多分、水を拭き取りきれてなくて、濡れたものがあったってことだろうし。
 でも、何を持ち帰ってしまったか、なんてわからない。
「え、と。なんか、持って帰ってるんですか、犯人?」
 僕の言葉に、会長が耳まで真っ赤になって、僕を睨んだ。怒ってるようだけど、恥ずかしがってるようにも見える。
「……そう。君、わたしの口から言わせたいの? 君って、そういう趣味の持ち主だったんだ」
 その目は、僕を蔑むのと同時に、「こいつ、絶対、退会させよう」って思ってるように見えた。
「いい? 犯人はここでトウモロコシを食べたのよ? わかるでしょ!?」
「わかりません」
 会長が深い溜息をついて僕を見た。まるで「本当にわかってなかったのか」って言いたいみたいだ。
「トウモロコシの皮って、消化されずにそのまま出るの。だったら、二十四時間以内だったら、出てきちゃうでしょ?」
「あ」
 そうか。容疑者と思しき人の、排泄物から、トウモロコシの皮が出てきて、その植物DNAが、ここに残ってるトウモロコシのDNAと一致したら、ここで同じトウモロコシを食べたっていうことになって。
 すると、なんで、御遺体があるのに、警察に通報せずに自分の食器を洗ったのかっていうことになるんだ。

 そのあと、警察が来て、所轄の刑事さんが会長に敬礼していたりしたけど、その後の捜査で、一つの結果が出た。
 それがどんなものであったのか。

 今度のホワイトデーに、僕から贈り物をしてみよう。
 でも、その前に、ミステリ考究会、やめさせられるかも……。


(会長の探偵物語4・了)


あとがき

 今回は、ちょっとお下品でございました。なお、これまでご紹介してませんでしたが、本作のコンセプト、ていうか、キャッチフレーズは、「事件遭遇、五分で解決」です。


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