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作品名:会長の探偵物語4 作者:ジン 竜珠

第1回 前編
 なんていうか、バレンタインは何事もなく過ぎたんだよね。
 そう、何事もなく。
 ……まあ、会長だしね。
 それはそうと、僕は、電話で親に頼まれて、こっちにいる知り合いの家を訪ねることになった。親戚、ていうわけじゃない。七年ぐらい前まで、、実家の近所に住んでた人で、当時、大学生さんだったと思う。家族ぐるみのつきあいみたいな感じで、親しくしてた。
 今は、僕が住んでる町で、なにかの事務所をやってて、一人暮らし、らしい。
 で、なんで、僕がそこに行くことになったかっていうと。
 ちょっと、ややこしいんだけど。
 その事務所って、法律相談関係らしいんだけど、明確に「法律事務所」ってうたってるわけじゃないらしい。つまりは、無資格。親御さんはそのことをご存じじゃなくて、たまたまそれを知った、僕の父さんが、その人に説教をしようということになったらしい。
 ただ、昨日、連絡しようとしたけど、電話に出ないそうで、様子を見て欲しい、ということだった。
 で、会長がいる、と。
 向かう途中で、たまたま会長に出会って、話をしたら、同行することになったんだよね。
「君って、事件を呼び込んじゃうみたいだから、ついて行くわ。もし事件に遭遇したとき、きっと現場を荒らして警察に迷惑かけると思うから」
 その言葉、そっくりそのまま、会長に返します。

 そのアパートに行って、外から声をかけたり、ノックしたりしたけど、返事がない。でも玄関のドアは鍵があいていた。
 時刻は午後四時半。事務所の方は閉まってたんで、こっちに来てみたけど。ここにいるんだ。
「すみません、いらっしゃいますか?」
 そう言って、ドアを開けると、そこにあったわけだ、背中に包丁を突き立てられた御遺体が!




 例によって、会長が実況見分を進めている。四度目になると、さすがに御遺体に慣れるだろう、って思われそうだけど、そんなことはない! 特に、背中に凶器が刺さったままなんて、生々しくて、今にも、卒倒しそうになる。本当に、会長って、どういう神経してるんだろう? 警察関係者でもないのに、冷静に実見ができるなんて、まともじゃない。
 会長は御遺体に触って、腕とか肘とか動かしてる。そのあと、テーブルの上を見た。
釣られて、僕も、台所のテーブルの上を見た。
 時間的に見て、昼食の最中だったんだろう。食べかけのご飯に、多分、お湯を注いで作るタイプのスープ。テーブルの中央には大皿があって、タレを付けて焼いたトウモロコシが、二本。付け合わせに、野菜炒め。そして、ご飯の横の皿に、食べ終わったらしい一本のトウモロコシ。あと、サラダ、それと、多分、酢の物の小鉢かな?
 ガスコンロには、野菜炒めを作ったらしいフライパンと、トウモロコシを焼いたらしい、調理用の金網が置きっ放しになってる。
 でも。
 なんか、違和感がある。テーブルの半分が、不自然に空いているのだ。それを見ていて、僕はあることに気がついた。これって、多分、他にも食事をとってた人がいるんじゃ……。慌てて会長を見ると、会長は担いできたナップザックから、何かを出すところだった。金属製っぽいそれは、L字型で、長い棒に、一枚の板が取り付けられている。その板はスライドするようだ。あれって、確か、長さとか計るのに使う、ノギスとかいう器具じゃなかったかな? いつかも思ったけど、会長って、いつも何を持ち歩いているんだろう?
 会長は、ノギスを使って、シンクの周辺にある何かを計っていた。
 そして、食器棚を眺めている。何かに気づいたように、頷くと、会長は、あらためて、テーブルの上を見た。
 そして、いつものように右手の平を顎に当て、四本の指を鼻と口にかぶせてる。
 なにかの結論に達したようだ。そして、僕に言った。
「君、警察に電話を」
 ……忘れてた。


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