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作品名:今日も杏とて。episode.2 作者:ジン 竜珠

最終回
 天宮先輩は、僕の前に立つと、シャツの前を開き、ブラジャーをはだけた。
 夢にまで見た、先輩の白い隆起がある。
「ええで、食べても」
 穏やかな笑みをたたえて、天宮先輩が僕を見る。
「杏さん!?」
 金髪の女の子の声が響く。
 何がどうなっているのか、わからないけど、願いが叶うんだ!
 僕はすぐにでも、喰らいつこうとした。
 でも、身体が動かない。
 なぜ? 目の前に、天宮先輩がいるのに、あれほど「食べたかった」モノがあるのに!?
 でも、同時に、僕の心に不思議な気持ちも生まれていた。
 僕は何をしているんだろう?って。
 そんな風に僕が戸惑っていると、天宮先輩が僕の頭を、その胸に抱き込んでくれた。そして、柔らかな声で言った。
「あんさんなあ、もう、この世には、いてませんのや。事故で、もう亡くなってはんねん。……堪忍な。ウチがもっと早ように気づけてたら、あんさん、こんな汚(けが)れたモンに、取り憑かれずにすんだのにな。あんさんの魂、穢(けが)されんかったのになあ」
 温かいものが、僕の頭に落ちる。
 すぐにわかった。
 天宮先輩、僕のために泣いてくれてる。
 ……ああ、今、すべてを思い出した。僕、天宮先輩が卒業して、その寂しさばかりに囚われてて、事故に遭って、命を落としてたんだ。
「堪忍な、堪忍なあ」
 先輩が僕の頭を撫でてくれながら、泣いてくれてる。
 なんていうことだろう。僕は、この人に、ここまでのことを言わせて、そしてここまでのことをさせてしまった。
 本当になんてことをしてしまったんだろう。
 気がつくと、僕の目からも涙がこぼれていた。
 僕は、天宮先輩から離れた。先輩の目からは涙がこぼれ続けている。
 その哀しそうな顔を見て、僕は胸が締め付けられた。
 僕は、彼女の笑顔が見たいんだ、涙じゃない!
 金髪の女の子も、哀しそうな顔で、僕を見てる。
 天宮先輩が、ジャケットの内ポケットから、閉じた扇子を出した。
「せめて、少しでも、ええとこへ行けるよう、あとで、祈らせてもらうさかい、今は、痛いの、こらえてな?」
 扇子が光を放つ。
 直感的にわかった。
 ああ、僕は、先輩の手で、逝くことができるんだ。
 開いた扇子で、天宮先輩が僕を薙(な)ぐ。
 先輩は「痛い」って言ったけど、そんなことはなかった。
 温かい手で優しく撫(な)でられたような、そんな風を感じた。
 光に包まれるのを感じながら、僕は噛みしめていた。
 天宮杏先輩を好きになった、幸せを。


(今日も杏とて。episode.2・了)


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