小説&まんが投稿
 ようこそゲストさん トップページへ ご利用方法 Q&A 操作マニュアル パスワードを忘れた
 ■ 目次へ

作品名:今日も杏とて。episode.1 作者:ジン 竜珠

第3回
 彼女たちは、私に名刺を出した。桜の花びらをモチーフにしたイラストがプリントされた、柔らかい印象のものだ。
 ロングヘアの少女が「天宮 杏 Amamiya Kyo」、ショートヘアの少女が「鬼城 珠璃 Kijo Juri」というそうだ。
 天宮さんが、大学生、鬼城さんが高校三年生だという。
 やっぱり、アイドル活動のような気がしてくるが、私のことを言い当てたということは、それなりの霊感者ということだろう。
 もしかしたら何処かに隠しカメラや、隠しマイクがあるのかも知れないが、私は、天宮さんを信じて、社宅で起きていることを話した。
 一通り話を聞き終えると、天宮さんが、鬼城さんを見た。
「珠璃はん、どない思います?」
 鬼城さんが少し考えてから言った。
「そうですね。その霊感師の言ってることは、少し違うんじゃないかと思います。具体的には、その場に行って視ないと」
 それに頷き、天宮さんが、私に向いた。
「ウチな、ホンマは、『スピリチュアル』いう名前、出しとうなかったんです。でもその方が、困ってはる、お人が、ここに入りやすい、いうて、勧められましてなあ」
 この少女は、いきなり何を言い出したんだ? 疑問符を貼りつけた私の顔を見て、天宮さんが溜息をついた。
「でも、実際に坂村はんが、おいでになりましたしなあ」
 そして、また、鬼城さんを見る。
「仕方ありまへん、この名前で行きますわ。登記を変えよ、思うてましたけど。あとで、紗弥はんにも、お電話しときませんとなあ」
 何を言っているんだろう、この子は?
 再び、私を見た天宮さんは、錦でできているらしい二十センチ四方ぐらいの袋を、テーブルの下から出した。そして、左回りに袋を回しながら、何か小声で唱え、私に差し出した。
「すみまへんけど、この袋に左手を入れて、中にあるものを一つだけ、出しておくれやす」
 言われた通りに袋に手を入れ、中にあるものを出す。木製のコインのようだ。見たこともない記号が書いてある。
 それを受け取った彼女は、それを紙にメモし、コインを袋に戻す。そして、また、袋を、何か唱えながら、左回りに回す。
「今度は、右手で、同じことをしてもらえますやろか?」
 言われた通りにすると、さっきと同じ記号のコインが出た。もしかしたら同じコインしか入っていないんじゃないか?
 そんな疑問が表情に出たのかも知れない。
 天宮さんが、柔らかい笑顔を浮かべて袋の中にあるものを出した。同じような木製のコインだったが、記号は全部違っていた。
「坂村はんが、同じマチゴマをお選びにならはったんは、ご神意です」
 そんなことを言って、天宮さんはメモを見る。
「心を戒めて、順逆を見るべし、ですか」
 そう呟いて、しばらく何かを考えているようだったけど、なにかの推測を立てたらしい。
 鬼城さんに出かける旨を伝え、私を見た。
「珠璃はん、一緒にお出かけしまひょ。ほな、現地に案内いただけますか、坂村はん?」


← 前の回  次の回 → ■ 目次

■ 小説&まんが投稿屋 トップページ
アクセス: 17