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作品名:神氣学園Saga 「AS(After Season)」 作者:ジン 竜珠

第53回 終劇之傳 傳之漆
 舞台袖で、杏は笑いを隠さず、そして、ハンカチで目尻を拭いていた。
「いやあ、おかしおかし! こんなにタイミングよう、展開するやなんて、さすが、竜輝はん、神さんのご加護をいただいてますなあ」
 零司は、あきれるしかない。
「お前、この先、考えてるのか? いい加減、グダグダになってきてるぞ?」
「せやなあ」
 と、杏は一息ついてから言った。
「とりあえず、台本は無視してくれますか?」
「お前、台本って大前提だろ?」
「それと、零司はんの役どころ、少し変えますさかい、そのおつもりでいておくれやす」
 役どころを変える。つまり、必死になって覚えたセリフも、演技も、すべて捨てろということだ。
 ここまで来ると、いっそのこと、すべてを成り行きに任せるしかなくなってくる。
 溜息をつき、諦めの笑みを浮かべて零司は言った。
「わかったよ。俺は何をすればいい?」
「鷹尋はんにも、お話し、せななりませんから、ちょっと場所、変えましょか」

「お前、こんなところで、何やってんの?」
 もう、集音部分を塞ぐ余裕さえない。
 何、このカオスな展開?
 美悠那はバスケットを持って、俺に近づいた。
「あたし、この近くでスイーツのお店をやってるものです。いつも新作スイーツを試していただいているので、持ってきました」
 そして、俺にバスケットを手渡すと、俺にだけ聞こえるように囁いた。
「天宮先輩から伝言。竜輝だけは、このスイーツを不味そうに食べてくれって。不本意だけど!」
 そして、引っ込んでいった。
 なんで、俺だけ、スイーツを不味そうに食べるの?
 ま、いいけど。
 珠璃がバスケットを覗き込み、言った。
「せっかくだから、みんなでいただこうよ」
 そして、俺たちは美悠那が持ってきたスイーツを食べる。おそらく、美悠那の手作りだろう。
 そして、俺は、美悠那の持ってきた杏さんのメッセージ通り、わざと不味そうな仕草をした。
「なあ、これ、美味いか?」
「おいしいよ? 何言ってるんだい?」
 珠璃が首を傾げたが、俺の様子から何かを察したんだろう。すぐに、他の四人に言った。
「ねえ、これ、おいしいよね?」
 四人も、とりあえず、合わせてくれたらしい。口々に美味しいと言ってる。その中で、俺だけは首を傾げ続け、美味しいスイーツを「不味い」と言い続けていた。


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