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作品名:神氣学園Saga 「AS(After Season)」 作者:ジン 竜珠

第5回 清秋傳 壱之傳 祝祭前夜・肆
 屋内でのイベント会場は、本校舎と実習棟、体育館と武道場だ。ただ、体育館は本祭では、午前中がダンスなんかのパフォーマンス、午後から演劇部と映研の発表の場、武道場は武道系クラブの演舞だから、実質的には各教室が発表の場だ。
 屋外ではそれこそ、バンドパフォーマンス、模擬店といった文化祭の定番があるんだが。
「ラウンジでも催し物って」
 と、俺は珠璃が開いたイベントガイドを見ている。これは一週間前に配布されたものだ。
 この学園は、市の南部にある。そして、この市は海に面していて、その浜辺の近くにも領地、もとい、所有地がある。そこに「ラウンジ」っていう三階建ての建物があるんだが、これが建っているのが非常に微妙な位置なのだ。一応、国有地との境は設けてあるんだが、ブロックが敷き詰めてあるだけなんで、注意しないとわからない。だから、この浜辺が学園のプライベートビーチだって言われても、おそらく十人中七人が納得する。
「敷地内に限るけどね、大道芸とか露店が出るよ」
 言葉がないっていうか、そもそも誰も何の疑問も持たねえの、とか、疑問持たねえことが俺には疑問なんだが、とか。
 うん、もういいや。そういうもんだってことで理解しておけば。
 俺と珠璃は、実習棟の二階に来た。ここにはいくつか空き教室があって、その一つを「歴史研究部」が使用している。零司(れいじ)さんはこの部活に所属しているのだ。
「お。来てくれたか、竜輝」
 零司さんが迎え入れてくれた。中には、コンパネが組み立ててあって、それには鳥の子紙が貼りつけてあって、写真があったり、年表があったり。
「なんか、細かいッスね」
 他の部員の人たちが作業する中、俺は貼られた写真や、年表なんかを見た。
 なんていうか、知らない単語が、ずらずら並んでる。
 そんな俺に、零司さんが言った。
「美島(みしま)氏のことは知ってるかな?」
「すんません、知りません」
 俺の言葉に、零司さんが苦笑する。
「千京市に『美嶋(みとう)』っていうエリアがあるだろ? あそこって、この付近の豪族だった美島氏が最期を迎えた地だからだって言われてるんだ」
 そして、何か地図のようなものが書いてある紙を指さす。
「ただ、ちょっと辻褄の合わないところもあってね。そのことはいろんな研究家が指摘してるんだけど、俺なりに思うところもあってね」
 と、年表を同時に示す。
「具体的な年代はわからないけど、十世紀初め頃に、隣の市に住んでいた美島氏の一族で内紛のようなものがあったらしい。そこで、ここへ逃げてきて、終焉を迎えたらしいんだが、千京市や近隣の市の史料なんかを照合すると、どうも十一世紀の終わり頃まで美島氏の家が続いていた形跡があるんだ。で、隣の市に『三島(さんとう)』っていう地域があってね。この三島は沖合に三つの島があるから、てことになってるんだけど、地元にはいわゆる『埋蔵金伝説』があるんだ。それで、この埋蔵金は美島氏によるものという見方があってね。その埋蔵金を護っていたのが、どうやら美島氏本人だったんじゃないかっていう研究報告がある。それでね、これは俺が思ってることなんだが、もしかしたら美島氏の影武者みたいな存在がいて、その人物が今の美嶋に来たんじゃないかな? そういう前提で史料を検討すると、いろいろと面白いことがわかってね。そうなると三島っていう地名は、もともと美島っていう字だったんじゃないかと……」
「……ああ、すんません、俺、他にも行くところがあって!」
「そうか? そうそう、三時から、体育館で今の研究結果について発表会があるから、よかったら聴きに来てくれ」
 俺は挨拶もそこそこに部屋を出ると、珠璃に言った。
「神歌とか、儀式次第の方が、簡単に覚えられるんじゃねえか、って気がするんだが?」
 珠璃は困ったような笑みを浮かべているだけだった。


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