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作品名:神氣学園Saga 「AS(After Season)」 作者:ジン 竜珠

第49回 終劇之傳 傳之参
 俺は結局、演劇部の公演に、参加することになった。
 俺だけじゃない。珠璃も、零司さんも、鷹尋も、麻雅祢も。
 要するに、いつものメンバーが出演することになったわけだ。
 ことの始まりは、去年の学園祭に遡る。ミステリ研から演劇部へネタの提供をしたらしい。その時、そのネタをシナリオに仕上げる条件として演劇部が提示したのが、俺を主役の探偵役として、出演させること。そのために、俺はミステリ研の古澤(ふるさわ)瑤子(ようこ)から説得されたわけだが、俺には演技は無理なんで、断った。
 だが、どうも、珠璃は乗り気だったらしい。杏さんに相談したところ、杏さんがシナリオを書くことを了承したらしい。
 どうも、演劇部って、杏さんからシナリオを提供してもらったことがあるらしくて、それが部内でも好評だったらしい。その辺りから、杏さんが話を持ちかけ、その辺りから、俺たちに出演の「依頼」があり、その辺りから、俺たちはこれに出演することになった。
 まあ、杏さんから「高校生活最後の、ええ思い出作りをしたいんや」と言われたら、断るわけにはいかないしな。
 で、うちの演劇部って、市内の高校の演劇部と合同で、六月、九月、十二月、翌年三月に、定期公演をしているという。しかも、土日の二日間にわたる、大規模なものだ。
 会場は宝條にある大きなイベントホール。収容人数は千八百人だそうだ。俺たちが出演するのは、二日目の朝、九時四十五分から。
 一応、順調に進行してはいるんだが、ちょっと気になるところが、まったくないかっていうと、そうでもない。
 始まる前に、杏さんから、携帯電話のハンズフリーツールのような無線機を渡されたのだ。俺たち五人にだけ。
 杏さん曰く。
「竜輝はんたちは、演劇部のお人や、あらへん。せやから、突然、セリフが飛ぶ、いうことも考えられます。その時に、ウチがセリフやら囁きますさかい、着けておいておくれやす」
 なのだが。
 それは、わかるよ? でもね。
 なんか、その時の杏さんの顔に浮かんでた笑みが、気になるんだよなあ。
 それは、俺だけじゃなく、珠璃も、零司さんも、鷹尋も感じたみたいだ。

 物語は、第一幕のクライマックスだ。
 この劇は、いわゆるミステリ。マンションの、とある部屋で、女性が殺される。ところが、その部屋は密室で、ていうやつ。
 配役は、俺が主人公の探偵、珠璃がその恋人。零司さんは、第二幕から登場する、警視庁捜査一課の刑事。鷹尋がその後輩刑事。麻雅祢は、殺される女性。つまり、死体役だ。
 俺と珠璃は、知り合いを訪ねて、そのマンションまで行き、その現場に出くわす。女性に会いに来た四人の人物が、「携帯に連絡をしても、それを取る気配がない。鍵はかかっていないが、チェーンがかかっている。明らかに様子がおかしい」というところに、俺たちが居合わせたというわけだ。
 そして、四人のうちの一人の提案で、ドアの蝶番(ちょうつがい)の部分を破壊し、死体となっている麻雅祢を見つける、というわけだ。
 種を明かせば、実は密室ではない。
 ドアの蝶番のネジを外す。そしてドアチェーンをかけ、蝶番とドアを金属用接着剤を使って、枠にはめ込む。しかも、御遺体にはドライアイスの冷気が当ててあって、死亡時間が誤魔化してあるのだ。
 だが、それを俺が演じる探偵が見破る。
 もう、わかるよな?
 そう、最初に「ドアを破ろう」と提案した奴が殺人者だ。ドアを破ったどさくさに紛れ、蝶番から外したネジを転がす。そして、発見者の一人を装うのだ。
 俺は、四人を前にして、言った。
「おかしいと思ったんですよ。どうして、蝶番のネジがすべて外れて、転がっているのか。普通は、ドアを破ると、ネジって、蝶番に残るんです」
 そして、俺はある一人を指摘する。だが、ここはまだ、第一幕の中盤だ。第二幕では、この容疑者さえ、殺されてしまう。その先がどう展開するか。
 それは、この先の楽しみにしておいてくれ。
 四人がザワついている。俺は静かな声で言った。ステージ用ワイヤレスマイクを着けているおかげで、声を張る必要、ないからな。
「お話を聞かせてもらえますか」
 そう言って、俺はある一人を指さした。
「そう、あなたです」
 俺の指の先にいるのは。
 身長二メートルほどの、赤がね色をした鬼だった。


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