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作品名:神氣学園Saga 「AS(After Season)」 作者:ジン 竜珠

第34回 杏香傳・前編
「おもろない」
 天宮杏は、未来がわかってしまうことを、面白くないと思った。
 この能力が発現したのは、おそらく、両親が修行の無理がたたって、続けざまに亡くなってしまった頃ではないだろうか。もしかしたら「こうなることがわかっていたら、あの時に……」という後悔が、強くあったからかも知れないが、それは誰にも……。そう、杏自身にもわからない。
 当時はまだ小学校の低学年だったと思う。
「おもろない」
 気がつくと、一日のうちに、何度も、そう呟くようになっていた。
 大きな家の中で、俗に「使用人」「住み込みの弟子」と呼ばれる人たちは、両親を亡くした彼女を気遣い、逆に距離を取っていた。
「おひいさま」
 と、彼女のことを呼ぶ、初老の女性だけが、彼女の話し相手といってもよかった。
「おひいさま。また、先のことが視えたんか?」
 頷くと、女性が柔らかな笑みで言った。
「ええか? 先のことが視えるんは、神さんの、ご配慮や」
 言うことがよくわからなかった。
「どういうこと?」
「ええことが視えたらな、それは『変わってまうかも知れへんから、気ぃつけや』いうことや。悪いことが視えたら、それは『こういうことにならんように、気ぃつけや』いうことや。せやからな」
 と、女性は杏の頭を撫でてくれながら、優しく言った。
「おひいさまが先のことを視るのんは、たくさんの人が、『今』を面白う生きられるようにするために、手助けしたってや、いう、神さんの思し召しや。決して、自分のことを投げ出したら、いけまへん。せっかく授かった人生や。面白う生きな、あきまへんえ?」

 この言葉がなかったら、世をひねくれた目でしか見られなくなっていただろうと、杏は実感している。


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