小説&まんが投稿
 ようこそゲストさん トップページへ ご利用方法 Q&A 操作マニュアル パスワードを忘れた
 ■ 目次へ

作品名:神氣学園Saga 「AS(After Season)」 作者:ジン 竜珠

第29回 聖夜傳 傳之拾
「え、と。スーツ姿で修祓(しゅばつ)って、やったことないんですけど、俺」
 市電の駅前で紗弥さんの車に拾ってもらい、まず行ったのは貸衣装店「X−FM」。ここはコスプレ商品も扱っているが、スーツやドレスも扱っている。ていうか、元々はそっち専門だったらしい。
 で、俺はスリーピースのグレーのスーツに着替えている。
「修祓? 何それ?」
 と、紗弥さんは不思議そうな顔をした。
「え? 厄介ごとなんでしょ?」
「ええ。ちょっと面倒なことなの」
「だから、それって何らかの怪異鎮め、なんでしょ?」
「え? 違うわよ? なんで、そう思ったの?」
 ……。
 いや、俺の方こそ「何これ?」なんだが?
「ああ」
 と紗弥さんが、外、正確にはコインパーキングの方を見た。
「大荷物を持ってきたな、って思ってたんだけど、ご神木の剣とか、榊の幣帛とか持ってきたんだ」
「ええ。あった方がいいかな、て思ったもんですから」
 紗弥さんが笑顔を浮かべ……。はっきり言おうか、「笑って言った」って。
「なんで、そんな勘違いしちゃったのかわからないけど、そういうことじゃないから」
 俺のネクタイを直しながら、紗弥さんが言った。
「ほんとは、美容院で髪をセットする時間が欲しかったんだけれど、仕方ないわ」
「あの、どういう用件なのか、説明いただけると、気持ちの持っていきかたとか、気分の切り替えとか、いろいろと助かるんですが?」
 俺の言葉に、紗弥さんが困ったような笑みを浮かべた。
「ある派閥の人を調査してたんだけど、ちょっとうっかりしちゃってね。相手の男性が、勘違いしちゃったの」
「勘違い?」
「私が、彼に興味を持ってる、って思われちゃったのね」
 珍しいな、そんなこと。
「紗弥さんが、そんな勘違いされちゃったんですか?」
 頷いて紗弥さんが溜息をついた。
「護代さんが逮捕されて、一区切りついて、それで油断しちゃったのね。すぐに相手の感情をそらす術とか、キャンセルする術とか、使ったんだけど」
 姿見にうつる俺の格好をチェックしながら、紗弥さんが説明する。
「『対人工作』になら、いくらでも呪術を使ってきたから慣れてるんだけど、『対自分』の中でも、こういう類いの術は、もう何年も使ってないから、加減とか、掴めなくて。『その人』ピンポイントに呪術かけるけど、強すぎたら周囲の『霊的環境』との辻褄があわなくなる怖れがあるし。それを避けようとしたら、周囲も『まじなわ』ないとならないでしょ? でもそれだと場合によっては、その周辺にいる人まで私のことを『認識』できなくなって、情報収集に支障が出ちゃうし。だから、いつも使っている手でお断りしようと思ったんだけど、無理だし」
「いつも使ってる手段?」
 ちょっと興味がある。零司さんのケースに応用できるかも知れない。
「『護代真吾氏に、お話を通していただけますか』って」
「……。そういう仲だったんですか?」
 ちょっと意外だ。この人、割り切っていると思ったんだけど。ていうか、零司さんとは、関係ねえな。
「まさか! あの人には悪いけど、まだ『そこまで』じゃなかったわ。ちょっとは興味あったけど。でも『お断り』には、とても有効だったわよ、あの人の名前」
 うん、やっぱり割り切ってるわ、この人。
「ただ、事情が事情でしょ? 私のキャリアにも影響するし、さすがに彼と心中できるほど、肩入れできないし」
 だから。お願いですから、そういう話、高校生にしないでもらえますか?
「だからね、竜輝さんの名前、出しちゃった」
「出しちゃった、て」
「竜輝さんなら、相手も納得するはずだし。……そうねえ、ベストは違う色の方がいいわね。すみません」
 と、紗弥さんは店の人を呼んだ。

 そのあと、隣の市にあるレストランに連れて行かれて、どういうわけか俺は「大学生」ってことになってて、ミハシラ・コーポの今の社長さんの親戚ってことになってて、ついでに卒業後は、ミハシラ・なんたら、とかいう会社の、何かの主任職からスタートすることが決まってるとか、紗弥さんが説明してたんだけど。で、相手が納得しちゃってたんだけど。
 咒力が働いていた気配が全然なかったから、純粋に紗弥さんの持つ「話力」だと思う。
 すげえな、マジで。


← 前の回  次の回 → ■ 目次

■ 小説&まんが投稿屋 トップページ
アクセス: 83