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作品名:神氣学園Saga 「AS(After Season)」 作者:ジン 竜珠

第23回 聖夜傳 傳之肆
 朝、新輝学園の昇降口に来た響堂零司は、自分の下足箱を開けた瞬間、溜息をついた。
「またか」
 そこにあったのは一つの手紙。懸想(けそう)の念が届いてくる。
 何故、自分なのだろう、と思う。数年前、ある女性に抱いた恋心のせいで、零司は己の心の醜さと向き合うことになった。それはそれでいいのだろう。修行上、いずれは自分の心と向き合うことになるのだから、それが早かっただけだと思えばなんということはない、
 だが、それに絡んで多くの人に迷惑をかけた。妹とはいまだに口をきけていない。
 そして、それが心理的な「くさび」となったのだろうか、零司は誰かを「好きになる」ということができなくなってしまった。 もしかしたら、怖れているのかも知れない。
 そういえば、一学年下で、宗家の嫡男、天宮竜輝は俗にいう「イケメン」だと思うが、どういうわけか、色恋のトラブルに見舞われている様子はない。宗師の孫だから、秘伝の呪術でも心得ていて、そんなトラブルが発生するのを防いでいる可能性もあるが、自分の心証としては彼は本当に「そういうこと」には恬淡(てんたん)としている。
 それでも最近は同門の鬼城珠璃と、並々ならぬ仲になりつつあるようだが、それが感じられるからこそ、他の女性との間には、まったく恋愛ごとの気配が感じられないのが不思議ではあった。
 それはともかく。
「どうしたものかな、これ?」
 何故、自分のような、活発とはいえず、むしろ周囲とは距離を置いているような人間を好きになる女子がいるのだろう。彼がここに転校してきてから一年以上経つが、その間にもらった「この手の手紙」はダース単位で数えた方がいい。そういえば竜輝が「この学園の連中は、世間の規格に当てはめて考えない方がいい」みたいなことを言っていたから、ひょっとしたらこの高校には、変わり者が多いのかも知れない。
 いつもの如く「友だちにしか思えない」と、断るのがいいだろう。あるいは、いつか使った「前、通っていた学校に、彼女がいる」という理由でもいいかも知れない。
 いずれにせよ、ちゃんと返答をしておいた方がいいだろう。

 放課後、佐久田鷹尋は本校舎の屋上にいた。
 呼び出されたからだ。
 そして、呼び出したのは名も顔も知らない二年女子。
「ごめんね、佐久田くん。いきなり呼び出しかけちゃって」
 と、その女子は言った。
「いいえ、構いませんよ。稲桐さんが陸上部に取材したいことがあるからって。それでここに来たんですけど、もしかして、先輩ですか、僕に話を聞きたいっていう方?」
 女生徒が、少し、呼吸を整えるように深呼吸を繰り返してから言った。
「ねえ。佐久田くんって、年上はイヤかな?」
「え?」
「一子ちゃんって、新聞部の後輩なの。それで、たまたま君のこと知ってね。ここに呼んでもらったの。ねえ、君って、年上はどう思う?」
「え、と」
 と、鷹尋は視線が泳ぐのを禁じ得ない。
 中三の頃、近所の女子高校生たちから、街中で声をかけられたことがある。その時は何だか怖くなって逃げ出したのだが、あいにく、ここではそんな手は使えない。
 女生徒が頬を赤く染めた。
「私、二Cの梅園優乃(うめぞの ゆうの)。新聞部なの。……今すぐ返事をくれなくてもいいから。じゃあ」
 と、彼女は校舎の中へ入っていった。
 正直、鷹尋は困った。今、彼は陸上が面白くなっている。短距離走だが、呼吸法の修練にいいから、長距離にも挑戦したいと思っているのだ。
 だから、というわけでもないが、他のことに興味を抱けない。それに日課の修行もある。とてもではないが、恋愛事に回している精神力はない。


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