小説&まんが投稿
 ようこそゲストさん トップページへ ご利用方法 Q&A 操作マニュアル パスワードを忘れた
 ■ 目次へ

作品名:神氣学園Saga 「AS(After Season)」 作者:ジン 竜珠

第12回 清秋傳 弐之傳 本祭狂詩曲・陸
 二B(うち)のクラスがやってるのは、喫茶店だ。何処の学校でもそうだと思うけど、喫茶店っていう出し物は、競合率が高い。だから、一学年につき、二クラスまで、そして生徒会に「企画書」を提出して、審査を通らないとならない。
 もう、わかるよな? うちの高校のことだから「普通」じゃ、通らない。だから、事実上「メイド」「執事」「お化け」といったコスプレは、初期設定になっている。
 ただ、それじゃあ納得しない連中も多い。「ムードが大事」「味で勝負」っていう人も多いんだ。ここ、本当に高校か?
 それで、そういう連中の要望に応えるため、個人やある程度の有志連合で催し物を出すこともできる。例えば、杏さんの「占断の館」とか。言っとくけど、珠璃がいるから、杏さんのイベント希望が通ったわけじゃねえぞ? 審査で、実際に杏さんが占って、その的中率がものすげえレベルだったから、らしい。……そういえば、その占断結果と的中率が半端なものじゃなくて、占いを依頼した女生徒が何人か、泣いたって聞いたな。それで、これは「シャレにならない」ってことで却下しようって意見が出たっていうのも聞いた。
 すまん、珠璃の強権発動かも知れねえ。

 本校舎の二Cの教室は、催し物の会場には、なっていない。二Cは「お化け屋敷」なんだが、なんか、三Dと共同開催することになったらしい。で、会場は三Dの教室、ここは半分がお化け屋敷用の荷物置き場、半分がミステリ研究会の研究発表の場だ。
 ここに俺が呼ばれたのは、同じクラスでミステリ研所属の、古澤瑤子(ふるさわ ようこ)に呼ばれてたからだ。
「ああ、天宮くん、来てくれたのね」
 部屋には、古澤しかいない。今は、彼女が当番なのだという。ちなみにお客さんの姿も見えない。
 珠璃がパネルを見ているので、俺も眺めてみた。どこかの部屋の中の写真とか、靴あとの写真とか、多分血痕と思しき、赤いものが、いくつも書いてある紙とか。
「何、これ?」
「これは、ロカールの法則の検証ね」
「ロカ……って、なんだ、それ?」
「有名な理論なんだけど、犯人は犯行現場(はんこうげんじょう)に何らかの痕跡を残すか、何かを持って帰ってしまうの。『物質の交換』『証拠の交換』っていうんだけどね」
 さっぱりわからない。理解が追いついて行かない俺に構わず、古澤が解説を始めた。
「例えばね、下足痕(げそくこん)、俗にいうゲソコン。これはただ単に『足跡(そくせき)』っていうだけじゃないの。靴の大きさや歩幅から、おおよその身長もわかるし、場合によっては、どの方向から来て何処の方向へ逃げたか、わかることもある。つまり、そういう情報を置いてきてしまうのね。これとは別に、犯人が現場から何かを持って帰ってしまうことがある。殺人や傷害の場合だと、返り血ね。それ以外にも、希(まれ)だけど、現場にいたペットなんかの毛とかを持ち帰ってしまうことがあるの。それから、一口に血痕っていってもいくつか種類が……」
「ああ、そうだ、古澤! なんか、俺に話があったんじゃねえのか!?」
 何か言いかける古澤を制して、俺は言った。
 まだ何か言いたそうだったが、古澤は、切り替えて俺に話を始めた。
「うちの演劇部ね、毎年六月、九月、十二月、翌年三月に、近隣の高校の演劇部合同で、定期公演をやってるの。土日の二日間を使った、大がかりなものよ」
「へえ。すげえな。前の学校じゃ、そんなのは、なかったな」
 つくづく、この高校が規格外だってのを思い知る。
「それでね、来年三月の公演なんだけど、ミステリ研で提供したネタを元に、シナリオを組んでもらえることになったの!」
 古澤が嬉しそうに言う。
「でね、よかったら、天宮くんに主役の名探偵役で、出てもらえないかな?」
「え?」
「ていうかね、天宮くんに、主役で出演してもらえるよう説得したら、シナリオにしてもらえるのよ。ねえ、どうかな?」
 演劇? ちょっと待て、俺には演技なんか無理だぞ? そりゃあ、主役に指名してもらえるのは、それなりに嬉しいけどな。
「悪いけど、俺は演技は……」
「ボクをヒロイン役にして、ラストに熱く抱き合うシーンがあるなら、構わないよ」
「珠璃、お前な……」
「鬼城さんも出てくれるの!?」
「ギャラはロハでいいよ。ただ、今言ったような条件を満たしてくれたら。理想をいえば、キスシーンだけど、それはちょっと無理だろうから」
「お前ら、俺の意見は……」
 と俺が言うこと、聞いちゃいねえ。
「キスは無理だけど、犯人の凶弾から主人公をかばって、彼の腕の中で息絶えるっていうのは、用意してるわ!」
「うーん。ボクは、ハッピーエンドの方がいいんだよね」
 だから、俺の意見は、聞かねえの?

 結局、この話は「持ち帰り」の「継続事項」になった。一方的に珠璃の主張で。
 ていうかさ。
「前から思ってたけど、この学校、なんでこんなにマニアックな連中が多いの?」
「伝統らしいよ?」
 廊下を歩きながら、珠璃は古澤から渡された、舞台劇のプロットに目を通していた。
「杏さんに相談しようかな」
 とか言いながら。


← 前の回  次の回 → ■ 目次

■ 小説&まんが投稿屋 トップページ
アクセス: 83