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作品名:初めての料理・全 作者:ジン 竜珠

最終回 初めての料理・全
 つきあい始めて、一ヶ月。
 彼女が俺の部屋で手料理を振る舞ってくれるという。
 俺のこの、舞い上がる気持ちを理解してもらえるだろうか!?
 思えば、この四月に大学に入学して、彼女と同じサークルになって。
 俺から声をかけたんだけど、向こうの方が積極的だったような気もするな。
 なぁぁんて、うぬぼれか!?
 まあ、とりあえずだ。
 もうすぐゴールデンウィークも近づいたこの時期に、彼女が俺に手料理を作ってくれる、ということは……。
 連休中に一段階、先へ進めるとみた!

 そして、その日。
 彼女が作ってくれたのは、洋食メインで、俺の好きなものばかり。彼女から「好きな料理」を聞かれて答えたが、まさかその通りに作ってくれるとは思わなかった。
 俺の胸に、ピンク色の風船が膨らんでいくのも、わかってもらえるんじゃないかな?
 そして一口、含んだ時。
 彼女が不安そうな顔で聞いてきた。
「ね。大丈夫?」
 ……料理の感想を聞くのに、第一声が「大丈夫?」っていうのは、斬新なんじゃないだろうか?
「何、食べさせてるの?」
 俺の言葉に、彼女が言った。
「私ね、今度の満月に、星へ帰らないとならないの」
「へえ。……聞きたいんだけど、この料理、何が入ってるの? もしかして、民間人が取り扱っちゃいけないものとか、入ってない?」
 しかし、それには答えず、寂しげな笑顔で彼女は言った。
「なんていうかな、思い出を作っておきたいんだ。このお料理もね、その思い出作りの一つ」
「うん。それはわかったからさ、材料、何?」
 彼女が目を伏せる。
「ゴメンね。星に帰らなきゃならないことは、わかってたの。でも、あなたに声をかけられて、どうしても、言い出せなくて」
「だからさ、会話しようね? 一方通行でしょ、これ?」
 彼女が瞳を潤ませた。
「この一ヶ月、私がはしゃいでるの、おかしいと思わなかった? 私ね、あなたのことが……」
 と、俺を見上げる。
 ええっと。
 この先の展開にもつきあった方がいいのかな、俺?
「ごめん。迷惑だったよね。でも、あなたに声をかけられた時、嬉しかった。だから、星へ帰るまで、あなたと楽しい時間を過ごしたかったの」
 涙が、彼女の頬を幾筋も流れていく。
 なんで、こんなことになってるの?
 彼女、手料理を作りに来たんじゃないの?
 で、俺、これをきっかけに、彼女との仲が進展するかも、って野望を抱いてたんじゃないの?
 なんで、このパソコン、誤変換が多いの?
 ごめん、最後のヤツ、関係なかったわ。
 彼女がしゃくり上げている。
 なので、俺は言った。
「とても、おいしいよ、これ」
「……うん。ありがと」
 彼女が頬を紅くして、うつむいた。


(初めての料理・全 了)


あとがき:マンガとかドラマで「料理の時、塩と砂糖を間違えた」っていうのがありますよね。昔は「そんなこと、あるわけねーじゃん」って思ってたんですが。実は、ガチで塩と砂糖を間違えたことがあります。とんでもないものができあがりました。「塩と砂糖を間違える」って、本当にあるんだなあ。


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