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作品名:神氣学園甘現傳 作者:ジン 竜珠

第9回 甘現傳 傳之玖
 夕方。
 俺、珠璃、杏さん、零司さん、鷹尋、麻雅祢。いつもの六人と姉貴が、宝條の北にある駅に来ていた。
 蛍矢さんと蓮奈さんを見送るためだ。二人はこの駅から電車に乗って、新幹線のターミナル駅へ行く。千京市には新幹線の駅がねえからな。

 前夜、俺は賭に出た。
 メチャクチャな内容だったが、他の五人が手伝ってくれた。文句を言わずに。これは本当に嬉しかった。
 まず、蓮奈さんを拉致する。もちろん、霊的保護を最大にして。そして、彼女を新輝学園のグラウンドに「固定」する。
 当然、蛍矢さん以外の人たちが動くだろうから、それは五人が足止めしてくれることになった。
 その状態で、蛍矢さんが新輝学園のグラウンドに来るように誘導するのだ。
 そして、俺は黄泉津大神戦で会得した「十種神宝(とくさのかむたから)」を使った。これを使えば、生と死との境を一時的に「ないもの」にできる。さすがに「死者を蘇らせること」は、今の俺には無理だが、死の女神の「要素」を無効にするぐらいはできる。
 その力を使い、俺は蓮奈さんの中にある「要素」を解消した。だが、それは同時に蓮奈さんの生命バランスを狂わせることにもなる。
 そこで、学園の氣と、神仙道の修行で「陽の氣」に満ちている、蛍矢さんを使うことを考えた。
 生命バランスを失い、大幅に「生気」を失った蓮奈さんには、学園に引き寄せられる「陰の氣」が流れ込む。そこへ、蛍矢さんの「陽の氣」を縫い込む。
 そうすれば、この両者はバランスを取り合い、安定するのだ。
 早い話、蛍矢さんと蓮奈さんは「二人で一人」になるのだ。もちろん、これは霊的な物であって、物理的には二人は自由に行動できる。
 つまり、蓮奈さんは、もう縛鎖咒にとらわれなくなるのだ。そうなれば、蓮奈さんは宗家へ行くことができるようになり、宗師に直接、何らかの咒を施してもらえる。
 ただ、それには、蛍矢さんに「本気」になってもらわねえとならないから、このことは伝えなかったが。

 この寒いのに、杏さんは扇子を広げ、口元を隠して言った。
「なんや、無理矢理、お二人をくっつけたみたいで、心苦しわあ」
 心苦しいって言ってるけど、俺には見えてますよ。扇子で隠しながら笑ってるでしょ、あなた?
 姉貴が言った。
「こっちのことは心配しないで。後任はいずれ、決まるでしょうし、さしあたって、対処するべき事態もないから」
 蛍矢さんが、姉貴に頭を下げる。そして、俺の腕を見た。
「すまねえな、その腕」
 俺は今、またギプスをはめてる。でも。
「たいしたことないですよ。今回は、ヒビが入っただけですし。それに、なんていうか」
 そうなんだよ。昨夜処置してもらったんだけど。学校が終わって病院行ったら、「ほとんど『ヒビ』、見えなくなってますねえ」とのこと。俺、本当に人間なんだろうか?
 珠璃が頭を下げる。
「すみません、手加減はしたんですが」
 蛍矢さんも、アバラにヒビが入ったそうだ。ほんとに、すいません、蛍矢さん! 俺からもキツく言っておきますんで!
 俺たちといくつか言葉を交わして、蛍矢さんと蓮奈さんは改札口を出た。その時、蓮奈さんが「お前の女になったわけではない。勘違いするな」って不機嫌そうに言ってたけど、余分に荷物持ってるし、蛍矢さんの身体、支えてるのがわかるんだよね。


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