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作品名:神氣学園甘現傳 作者:ジン 竜珠

第6回 甘現傳 傳之陸
「それって、つまり、今の不完全な状態を、その人に刻むことなんです。そもそも、霊的レベルで、そんな状態になっている可能性が高いわけですよね? だとしたら、それを覆すだけの強力な『因果』を持って来なければならない。それこそ、ひと一人を誕生させるぐらい強力なものを」
 天宮流の秘奥伝には、確かに死者を蘇らせるものがあるし、伝聞だが、それこそ「ひと一人」生み出すものもあるらしい。もちろん秘伝だろうから、そう簡単には使えないだろう。
 言い換えると、それに匹敵するだけのことをしなければならないということなのだ。
 秘伝部分は伏せて、そんな内容のことを話すと、蛍矢さんが腕組みをする。
「なるほど……。思ったより、深刻だな」
 その様子を見て、俺たちは言葉を繋げないでいた。

 杏さんは、市の西部である暮満に住んでいる。お手伝いさんが二人いるそうだが、通学や街へのショッピングには、いつも一人だ。だが、習い事や、こういう「特別な用事」の時は、大体、お手伝いの人の運転する車で移動している。普段はバスでここまで来ているけど、今日はそうじゃない。
 午後八時に到着した杏さんは、水干を着ている。学園祭の時に着てたものよりも、もっと、改まった感じのものだ。宗家で何かの儀式をする時には俺も、まだ、衣冠(いかん)は許されてないが、斎服(さいふく)を着る。
 それは、つまり、杏さんも、それだけ本気で対応してくれる、ということなのだ。
 そのことがわかった蛍矢さんは、黙って、一礼した。

 お手伝いさんには、居間で待ってもらっている。
 これはお手伝いさんを信用していない、ということではない。
 単純に「霊的雑音」を、シャットアウトしたいということ。事情の詳細を知る関係者のみで「力場」を作った方が、いいそうだ。
 客間の一つに祭壇を設け、俺、姉貴、珠璃の三人で「場」を祓う。杏さんと蛍矢さんは、それに合わせ、自分たちの「雑念」を祓っているようだ。
 それが終わると、杏さんが蛍矢さんに言った。
「三変筮にて、占断させてもらいます」
 そう言って、お辞儀すると、口の中で何かを唱えながら筮竹をさばいた。
 筮竹を数え、算木を並べる。
 そうして得た卦を印し、サイコロを振ったあと、同じように一から筮竹を操った。
 サイコロを振り、やがて、占断が終わったようだ。
 杏さんが、蛍矢さんを見た。
「まずは『地雷復(ちらいふく)』の二爻(にこう)を得ました。『復は亨(とお)る』。そして『仲間との行動は吉』。この行動の結果が『天火同人(てんかどうじん)』の五爻(ごこう)。『大川(たいせん)を渡るによろし』、そして『いろいろあっても流れに任せるべし』。結果的には、吉と出ました。せやけど」
 と、杏さんが真剣なまなざしで蛍矢さんを見た。
「これが、何を意味するか、お分かりですやろか?」
 蛍矢さんがちょっとだけ、首を傾げる。
 杏さんが、厳しいまなざしになる。
「すべては、神さんの、思し召しのままに。人間としての、一切の計らいを捨て、すべてのことを神さんの御旨(みむね)にお任せすること。それがいかなるものであっても、最善であると心得ること。それだけの覚悟を、お持ちになれますか?」


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