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作品名:神氣学園甘現傳 作者:ジン 竜珠

第4回 甘現傳 傳之肆
 放課後、学校を出ると、そこに蛍矢さんがいた。
 コートを着ているので、すぐはわからなかったけど、結構目立つザンバラ髪だし。
「よう。悪いが、ちょっと、顔貸してくれねえかな?」
 照れくさそうな笑みを浮かべてる。
「お前に頼むのは、ちょっと気が引けるんだが、直接、頼むのも、な」
 直接、頼む?
 誰に、何を?

 俺たちは、昴の東にある海浜公園にいた。いい加減、寒い季節なんで、俺たち以外に誰もいない。人払いの結界を張るまでもない。
「何ですか、話って?」
 蛍矢さんがおごってくれた緑茶を飲みながら、俺は聞いた。
 エスプレッソを一口飲んで、蛍矢さんが言った。
「お前の仲間に、占いの腕が半端ねえのがいるだろ?」
「ああ、杏さんですか?」
「そいつに、ちょいと占って欲しいことがあるんだ」
 占って欲しいことがある? なんか、意外だな。この人、あくまで俺の印象だけど、占いの結果で行動をどうこうする、て感じ、ねえしな。
「どうしたんですか、いきなり?」
 蛍矢さんは、杏さんとも面識がある。今さら「直接、頼みづらい」っていうのは、ないと思うけど?
「直接、頼んだ方がいいんじゃないんですか? 俺を仲介する意味、ないですよ? 俺が口きいたからって、杏さんの心証が変わるとか、そんなの、ありませんし」
「いや、な。お前の言うことも、もっともなんだが、なんていうか、な」
 なんか、言いにくそうだ。
 エスプレッソを一口飲むと、蛍矢さんは海に目をやった。俺もつられて、その方を見た。
 波音が、今は冷え冷えとさえ、響く。波音には、精神を沈静させる「f分の一」とかいう周波数帯が含まれているって聞いたことがあるけど、時期や環境によりけりだ。
「俺な、憧れている人がいて、その人、今、絶体絶命の状態にあるんだ。俺の力じゃ、どうにもできねえ。いや、宗師の力でもどうにもならねえみたいなんだ」
 俺は、驚いて、蛍矢さんを見た。
 今、何を言ったんだ、この人!? 爺さんでもどうにもならねえ事態!?
「その事態をどうにかしたくて、杏さんのアドバイスが欲しいっていうことですね? でも、宗師にもどうにもできないことなんでしょ?」
 蛍矢さんが頷く。
「こう言ったら、なんだが、案外エキスパートな考え方をしない方がいいんじゃねえか、そんな風に思ったんだ」
 ちょっと無理なんじゃないだろうか? その事態がどんなものかわからねえけど、あの爺さんでもどうにもならないことだ、いくら杏さんでも解決の糸口がつかめるものだろうか?
 しかし。
 だからこそ、蛍矢さんは俺に話をしたんだろう。
「宗師を疑うような、そんな内容を占いたい。だから、分家筋である杏さんには、直接、依頼しづらい。それで、宗師の孫である俺の口添えが欲しい。そういうことですね?」
「話には聞いてたが、お前、鋭いな。まあ、そういうことだ」
 蛍矢さんが苦笑いを浮かべる。
 どんな内容なのか、それは今はわからないけど、蛍矢さんがそこまでの思いを持っているのだとしたら。
 無下に断ることなど、できそうになかった。


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