小説&まんが投稿
 ようこそゲストさん トップページへ ご利用方法 Q&A 操作マニュアル パスワードを忘れた
 ■ 目次へ

作品名:神氣学園甘現傳 作者:ジン 竜珠

第2回 甘現傳 傳之弐
 夜。五十村蛍矢(いそむら けいや)は、とある冥神のベースに来ていた。
 ここには、真佐浦蓮奈(まさうら れんな)が封じられている。今、彼女は過去に起きた「ある事件」のせいで、ここに閉じ込められていた。
 いや。
 ここから動けない状態になっていた。
 蛍矢の目の前で、蓮奈は眠りに落ちている。着ている服には留め具や金輪が設けられ、それには鎖が繋がって、天井や壁に彼女を拘束していた。
 こうしないと、彼女はすぐにでも死んでしまうのだ。
「姐御(あねご)」
 胸が締め付けられるような想いで、蛍矢が呟く。
 天宮流神仙道の宗師でさえ、彼女を救うことができず、このような対処しかできていない。
 彼女はあと、どれぐらいこうしていなければならないのか。
 だが、それは同時に「彼女はあと、どのぐらい、生きていられるのか」でもあった。
 有効と思われる手は打った。
 氣を集め、身体を構成する、ということをやってみた。
 だが、絶えず氣を集積し、練り、体(たい)とできねば意味はない。そして、蓮奈の身体も精神も、それに耐えうる状態にない。
 禁咒になるが、蓮奈自身を一時的に式神のような存在にし、意識を別のものに移すことすら考えた。
 だが、人間をそのような存在にすることは、道に反する。それ以前に、蛍矢にはそれだけの技量がない。
 蛍矢は奥歯を噛みしめる。
 自分の無力が恨めしくある。
 もう八年ほど前になるだろうか。

 あれは自分が「冥神」のメンバーに任じられて間もない頃だった。
 当時の自分は天狗になっていたと思う。師に連れられ、千京市へ来た。そこで「天宮の者」に「冥神」という特殊な任務を帯びた組織に入るよう命令された。
「私立新輝学園」という高校の「氣」の揺らぎを監視し、異変がある場合は対処し、無理なら宗家へ連絡せよ。
 この命令は、正直、訳がわからなかったが、「選ばれた」ということは理解した。
 そして、ある冬のあの日、あの夜。
 学園の北東にある菱森山というところで、異様な氣の実体化を感じ、急行した時だった。
 夏場は様々な行事に使われるという、小規模の野球場ほどの、拓けたその場所にいたのは、西洋の悪魔に似た姿の魔怪。湾曲した二つの角、黒い体毛に覆われ、背にはコウモリのものに似た翼を持っている。身長は三メートルほどであろうか。
 東洋の呪的公式によって喚び出されたものではないようだが、その身を構成するのは純粋な「陰の氣」。ならば、洋の東西に関わらず、滅することができるはず。
 そう考え、仲間の到着を待たず、飛び込んだ。そしてまさに相手を滅ぼそうとした時。
 炎にも似た熱い衝撃波が蛍矢の胴を横殴りにした。軽く二十メートルは噴き飛ばされただろうか。全身をむしばむ気だるさにこらえながら、起き上がった蛍矢が目にしたのは、林から出てきた、ドラゴンに似た三十メートル近くありそうな魔怪。そしてそれにまたがる、赤い西洋の甲冑に身を包んだ一人の女。
「貴様、この国の術士か?」
 西洋人のようだったが、流ちょうな日本語だった。
「我が一族の宿願を果たすために、この地のマナは有用である! 故に、邪魔する者は、遠祖ユーサーの名において、我が剣で処断する!」
 ドラゴンから降りた女が剣を抜き、歩み寄ってくる。蛍矢は片膝をつくことはできるが、立つことはできない。
 女が剣を振り上げ、蛍矢が観念した時だった。


← 前の回  次の回 → ■ 目次

■ 小説&まんが投稿屋 トップページ
アクセス: 14