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作品名:神氣学園聖夜傳 作者:ジン 竜珠

第6回 聖夜傳 傳之陸
「急いで書いたらしくて、その手紙、ところどころ支離滅裂だったんだが、その分、直球ていうかなんていうか、ダイレクトに気持ちが伝わってな。『友だちにしか思えない』っていって追い返すのは、可哀想でさ。だからといって『こっちにつきあってる彼女がいる』って言うのは、あとのこと考えたら、そんなことはできないしな」
 詳しく聞いた訳じゃないが、この人、昔、色恋がらみで辛い体験してるからな。多分、今は、まだそんな気持ちになれねえんだろう。
 うかつなことをしたら、双方の心に傷が残る。この人は、きっとそう考えてる。
 俺たちは修行中の身。まだ、「そこ」まで心は強くない。
 しばらく考えた俺だが。
 そうだな、姉貴とか、紗弥さん辺りに相談すれば、何かいい知恵がもらえるかも。
「わかりました。何とかできるかも知れません」
 俺がそう言うと、零司さんが笑顔を浮かべた。
「そうか! 助かるよ、竜輝!」
 そう言って、上着のポケットから一枚のメモを出した。
「これ、彼女の携帯の番号と、メールアドレスな。下に書いてるのが、彼女が今度、千京市に来る日時。すまん! よろしく頼むよ、うまく断ってくれ!」
「……え?」
 ちょっと待って?
「悪い、実は急用が入っちゃってさ、こっちから相談しておいて失礼とは思うんだが、俺、帰るから!」
 そう言って、零司さんは帰ってしまった。
 ……何? 俺が零司さんの代わりに断るの?
 そういう相談だったんだっけ?
 零司さんの背中が見えなくなった頃、鷹尋から電話がかかってきた。
『竜輝、ちょっといいかな?』
「どうした、鷹尋?」
『うん。実は相談したいことがあって』
 相談か。今日はそういう「日」なのかな?
『今日は陸上部、六時で終わりなんだ。六時半頃、会えないかな?』
 そして、俺は六時半、宝條にある喫茶店「カレイドスコープ」で鷹尋と待ち合わせることにした。

 昼休み、天宮杏は手紙で、本校舎の空き教室に呼び出されていた。
 五十人目になるのか六十人目になるのか、もう数えてさえいないが、今度も、あまり「面白い」男ではないのが視える。
 どうも「個性的」と「協調性がないだけ」、「ユニーク」と「社会の規範が頭に入っていないだけ」をはき違えている者が多いような気がする。気に入れられようと「ユニークな行動」を取っているつもりのようだが、実際には常識を疑うような行動が多い。例えば「特別な何か」に理解があるふりをするために、逆の立場の者を平気で中傷するなど。
 そして、その辺りの判断ができないでいるところが「恋は盲目」たるところだろうが、自分は神仙道の道士だ。社会の枠組みというものを理解しておかねばならないし、基本的な部分を護らねば、神意には、かなわない。
 だから、そのような行動をとるような者を認める訳にはいかないのだ。
 そして、案の定、これまで告白してきた男たちと変わらなかった。放課後ではなく、昼休みに呼び出しをかけてきたあたりに、ある種の「発想の転換」らしきものを感じるが、それ以上ではない。いや、しいていうなら「異なる点」が見受けられるのだが……。
 相手がかなり食い下がってきたから、とりあえず「お友だちから、始めまひょ」と、いつものように答えておいたが、この時点で、結論は出ていた。
 教室から出て、ふと外を見ると、本校舎と実習棟の間にある中庭で、天宮竜輝がベンチに座って、ほうけているのが見えた。
 その時、彼女の頭に閃くものがあった。
 彼女には予知能力がある。もっとも、彼女に予知できるのは「変わる可能性を持った未来」。だから、今、彼女に視えている未来が実現するとは限らないが、もしこの通りになるとしたら。
「ここで、『これ』を放り込んだら、面白いことになりますやろなあ」
 なんとも愉快な気持ちがこみ上げてくるのを抑えられず、少しだけ声を出して笑うと、杏は携帯を出し、珠璃にメールを打ち始めた。


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