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作品名:神氣学園聖夜傳 作者:ジン 竜珠

最終回 聖夜傳 傳之拾参
 イブの午後七時から、我が家でクリスマスパーティーだ。
 今は午後六時十五分。俺は、姉貴、鷹尋、珠璃とで追加の買い出しに出ていた。
 姉貴と鷹尋、俺と珠璃の二手に分かれ、ショッピング街にいる。
 一通り、買い物を終え、俺と珠璃は公園でベンチに座っていた。
 昼前から、雪が降り始めたが、ホワイトクリスマスはちょっと無理だ。
 珠璃が自動販売機で買ってきた緑茶を受け取り、俺はふたを開ける。珠璃はホットココアだ。
 イルミネーションが点灯している中、道行く人々は、幸せそうだ。
「何かを楽しい、って感じている間は、人は『誰か』や『何か』に対する恨みを忘れる」。
 これ、天宮流神仙道の宗師である爺さんの言葉だけど、これに感銘を受けて、修行をやめ、お笑い芸人を目指した人も、過去にはいたらしい。
 それが正しいかどうかは、俺には判断できないし、する気もない。
 爺さんの言葉が、実感として俺の中にあるからな。だから、これは俺の主観でしかない。だから、判断はしない。
「竜輝、今日はたいへんだったね」
 珠璃が笑顔で言う。
「まあな。ていうか、明日は零司さんのかわりに、お断りしないとならねえし。まだまだ、厄介ごとは片付いていねえ」
 また、珠璃が笑みをこぼす。
「難しいところだよねえ、傷つけないように、て、不可能だから」
「言葉を選ぼうがどうしようが、相手の想いを否定することにかわりはないわけだからな」
 俺が溜息をつくと、珠璃が眼鏡を外した。
「いい言葉、教えてあげようか?」
「え? そんなものがあるのか?」
 もしかしたら、女子目線で、何か、うまい表現があるのかも知れねえ。
 珠璃が俺を見上げる。
「キスしてくれたら、教えてあげるよ?」
「……。本気で言ってるのか?」
 しばらくして。
「竜輝、今日って、クリスマスイブだよ? ちょっとはロマンティックな気分に浸りたいとか、ないのかな、キミは?」
 俺もしばらく珠璃を見て、言った。
「心にもないこと、言うんじゃねえよ」
 珠璃が眼鏡をかけて、笑う。
「やっぱり、キミにはわかっちゃうか」
 当たり前だ。お前が、クリスマスイブとか、そんな雰囲気に流されるような軽いやつかってーの!
「お前とは、文字通り、生死を共にしてるんだ。それぐらい、わかるよ。世間様の行事に染まるようなタマじゃねえだろ、お前?」
 それに、と俺は、あさっての方を向いて小声で言った。
「クリスマスとか、そんなの、そもそも関係ねえし」
 それが聞こえたのか聞こえてないのか、それはわからねえが、珠璃は俺の肩に頭を預けて言った。
「明日、その女性に言ってあげるといい。『リベンジを望む』って」
「それ、交際を断ったことにならねえだろ?」
「いろんな『時間稼ぎ』には、なるさ。相手の気持ちの整理の、そして零司さんの心の整理の」
 ……。そうかもな。
 その時、携帯が鳴った。
 姉貴たちの方も、買い物がすんだらしい。
「じゃあ、駐車場に行くか」
 俺がそう言うと、珠璃も頷いた。


(神氣学園聖夜傳 了)


あとがき:ユルいお話でございました。とりあえず、あと短編二本で「神氣学園」SAGA、全編終了の予定です。もうしばらく、おつきあいのほどを、お願い致します。


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