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作品名:神氣学園聖夜傳 作者:ジン 竜珠

第12回 聖夜傳 傳之拾弐
『と、いうわけだ。すまんが、こっちに来てくれるか、竜輝?』
「何、やっちゃってくれてるんですか、あなた?」
 凉さんから電話を受けた俺は、あきれるしかなかった。
 人の名前が出たあとで異変がみてとれたら、なんとかするもんじゃないんですか?
 言いかけて、やめた。そのぐらい、わかってるはずだよね、この人なら?
『いやあ、お前に対して、負の念を持っちまったからなあ。お前自身が祓った方がいいんだ』
「その理屈はわかりますけどね」
 やや変則的な方法だが、誰かに対して恨みの念を持った「何か」を下がらせる方法として、その恨みの対象と対峙させるというやり方がある。要は「恨みの念の解消」だ。言いたいことを言わせて、念が弱くなったところを祓うってやつだな。この場合、相手が腹に溜めていることをブチまけられれば、必ずしも本人が相手である必要はねえんだが。
 もちろん、神祇の御加護をいただいて、相手を浄化するのが本来のやり方だ。
 凉さんのことだ。本人を呼んだ方が効果的だとでも思ったんだろう。
「わかりました。三十分で行きますんで」
『悪ィな』
 通話を終えると、俺は外出の準備を始めた。玄関に行くと、珠璃が来た。
「ああ、すまん、ちょっと凉さんに呼び出し食らったんで、学校まで行ってくる」
「そう。頑張ってね」
 そう言った珠璃だが、何かを思い出したのだろう。
「あのさ、竜輝」
 と、珠璃が近寄ってきた。
「どうした?」
「この間、杏さんからメールもらったんだ」
「杏さんから、メール?」
 なんだろう、イヤな予感しかしない。
「で? 何て言ってきたんだ、あの人?」
「ゴメン、詳しくは言えない。でも」
 と、爽やかな笑顔になって言った。
「夫が『モテる』って、奥さんにとっては密かな歓びなんだよ? だから、頑張ってね」
 珠璃の、よくわからねえ応援を背に、俺は出かけた。

 到着すると、半球状の結界の中にソイツがいた。
「凉さんなら、簡単に祓えると思いますけど?」
「念を浄化させてやった方がいいと思ってな」
 と、苦笑いを浮かべている。
 俺は、そいつの前に立つ。その時、携帯が鳴った。杏さんだ。
「どうかしましたか?」
『そろそろ、お着きにならはった頃やと思いましてなあ』
「着いた? 誰が? 何処に?」
『竜輝はんと、あの人。お二人とも、そこに』
 え? 何言ってるんだ、この人?
『先日のことです。ウチに告白なさった、お人がいらっしゃいましてなあ。ただ、面白うないお方やさかい、ゴメンナサイさせてもらいましたけど。その時、つい口が滑ってしまいましてなあ』
「……なんか、言いましたか、変なこと?」
『たいしたことや、あらしまへん。二年の天宮竜輝いう下級生、素敵やなあ、て』
「……」
『イブに、学校で開催されるパーティーに参加するらしい、ていう、ただの「思い込み」も、ついうっかり、口を滑らせてしまいましてなあ』
「それって、絶対、口が滑ったんじゃないですよね?」
『それから、そのお人、かなり強い憑霊体質でしてなあ。これまでも、ちょくちょく霊災に遭ってはったようですえ?』
 ふと、異様な気配に気づき、そちらを見ると、思い切り濃い「負の氣」をまとわりつかせた男子高校生がやって来るところだった。
 生徒と外部の不審者とを区別するために、うちの学校、ラウンジ以外は、長期休暇とかでも制服着用で来るのが義務なんだよなあ。あんなに強力なマイナスの波動にくるまれているのに、それを守ってるなんざ、律儀なのか、ただの条件反射なのか。
 凉さんが嬉しそうに言った。
「あいつも、竜輝に用があるみたいだな。大モテじゃないか、お前?」
 その男子生徒を見て、結界にいる人外を見て。
 そして、凉さんを見ながら、杏さんとの通話状態のままの携帯を当てて、俺は言った。
「面倒なこと、しないでもらえますか?」


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