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作品名:会長の「探偵物語」3 作者:ジン 竜珠

最終回
 今度は言っておこう。
「あの、オーナー? ペンションのオーナーには警察権とか、逮捕権はないんです。だから、それは『軟禁』とか『監禁』って呼ばれる犯罪の可能性が……」
「刑法第三十七条を援用できるわ。だから、問題ないの」
 なんですか、それ?
 僕が質問しようとした時。
 オーナーが、
「わかりました」
 と言って、階段を降りていった。会長って、催眠術の才能でもあるんだろうか?
 会長が、また、御遺体のある部屋に行った。
 正直言って、勘弁願いたいんだけど、あの部屋に行くの。でも、一応、推理とか聞いておきたいし。
「会長。あの、のっぽの人がウソついたのはわかります。でも、なんで、この女性が殺されちゃったんですか?」
「多分、気づいたのね、あの人が指名手配犯だってことに。それで、もしかしたらお金を脅し取ろうとしたのかも知れない。でも、そこまではわからない。だから、これはただの想像」
「あの、のっぽの人が指名手配の殺人犯なんですか!? でも、顔が違うように思うんですけど!?」
「整形したに決まってるでしょ?」
「でも、それだったら、手配犯だって言い切れないんじゃ……!」
 会長が呆れたように僕を見る。まるで「本当に気がついてなかったのか、コイツ」って言ってるようにも、「コイツ、退会させようかしら」って思ってるようにも見えた。
「あのね、現代の美容整形の技術では、絶対に変えられないものがあるの」
「変えられないもの?」
 なんだろう? 今の整形ってかなり技術が高いって聞いてるけど?
「耳孔の位置よ」
「じこう?」
 会長の仕草でわかった。耳の穴か。
「鼻の穴を狭めたり、口の端を下げたりっていうのは可能だけど、これだけは絶対に変えられないの」
 そして、スマホの写真を僕に見せる。
「これを見比べると、耳珠(じしゅ)や三角窩(さんかくか)の特徴も一致するわ」
 だから、一般的じゃない単語は使わないで欲しいんだけど。
「それにね、人間の身体には、ある種の対比性があるの。人体比率っていうんだけど。たとえば、手首から肘までの長さは、足の指先から踵までの長さと、ほぼ同じなの。この被害者は、靴の販売に関係するお仕事についていたらしいから、そのことを知ってて当然。それで、顔見せの映像と空き家の靴あとを見ていて、気がついちゃったのね」
 そうか。靴あとが大きいから、背が高い人だって思って、背が高い人がいたことを思い出して動画をチェックして。
 それで、こんなことになったのか。
 でも、僕には疑問が残っていた。
「どうして手配犯は、このイベントスタッフに応募したんでしょうか?」
「さあ? それは本人に聞かないと。逃走資金に不安があったのか、絶対にバレない自信があったのか。……ひと恋しかった、ていうのは、好意的に解釈しすぎね」

 その後、警察が到着して、あの時の所轄の刑事さんが一緒にいて、どうも指名手配犯を追って、ここまで来たらしいけど。で、会長を見て「なんで、またお前がいるの?」とか「俺の立場も考えてくれよ」とか「お前を危険な目にあわせて、本庁と事を構えたくないんだけど」とか。いろいろと、弱り切っていたんだけど、捜査で結論が出た。
 それがどんなものであったのか。

 バレンタインデー、もうすぐなんだけど、全然、そんな素振りがないんだよね、会長。


(会長の「探偵物語」3・了)
 

あとがき

 これにて「会長の『探偵物語』」、一区切りでございます。最初は単発のつもりだったんですよ。でも。二本目を思いついたら「三部作っていうか、三本が一区切りだろうな」って、思ってしまって。ひとまとめにするのがスジなんですが、なかなか三本目ができなかったので、こういう形になりました。
 また「会長」と「僕」が登場することがございましたら(多分、ないと思いますが)、その時は、またよろしくお願いしますね。


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