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作品名:神氣学園清秋傳 作者:ジン 竜珠

第6回 壱之傳 祝祭前夜・伍
 石動紗弥(いするぎ さや)は、新輝祭前夜祭の事務のため、学園に来ていた。そして、今は新理事長である如月双葉とともに、本校舎の東入り口に来ている。
「うーん、青春よねえ」
 と、双葉は嬉しそうだ。
「私、高校の頃とか勉強づけだったから、こういう行事、心の底から楽しんだことないの。あなたは? 石動さん?」
「私も似たようなものです」
 と、紗弥は答える。もっとも、紗弥の場合「修行づけ」というべきだが。
 辺りを楽しげに見て回っている双葉は、ふと、紗弥に向いた。
「ねえ、石動さん。お願いがあるんだけど」
 嫌な予感がした。一応、断っておいた方がいいかも知れない。
「私、雇い主が警察に捕まる、といったことは、ご遠慮願いたいのですが」
 それを聴き、ちょっとだけ考えると、双葉は破顔した。
「それなら、大丈夫。健三さん、ああ、会長ジュニアって呼んだ方がわかりやすいかしら? あの人、確かに人格者だけれど、なんていうか、ガツガツしたところがないのよね。あの人について行ったって、先、見えてるもの。だから、抜けることにしたわ。今さら、伯父様に逆らって他の派閥に移るのも、節操がないし。でね」
 と、校舎を見上げる。
「私、この学園、好きになっちゃった。だから、できればここの理事長職、続けたいの。もし、私をここの職から引きずり下ろそうとする動きがあったら、遠慮はいらないから、斬り捨ててちょうだい」
 意外な言葉だった。しかし、不快なものではない。
「手加減は、いかが致しましょうか?」
「そうねえ」と、双葉は考える。
「護代前理事長なら、再起不能に追い込むところでしょうけど、そこまでする必要はないわ」
「では、とりあえず、理事長に対して『お中元とお歳暮を欠かさない』程度に留めておくので、よろしいですか?」
「任せるわ」
 と、双葉は笑顔になる。
 それに一礼すると、実習棟から一組の男女がやってくるのが見えた。どちらもここの生徒だ。男子の方は右腕をギプスで固定している。女子の方はショートヘアで眼鏡をかけている。
 宗師の孫、天宮竜輝と、天宮の分家筋・鬼城家の一人娘、鬼城珠璃だ。
 明言しているわけではないが、二人は両想いのようだし、お似合いだと思う。今の時代、家柄がどうの、というのはバカげていると、紗弥は思っている。
 向こうがこちらに気づいたようだ。無視をするのは薄情の極みだし、同じ学園で顔を合わせたこともあるから、知らない振りをすることもない。もっとも、ここの教師である碧海凉(あおみ りょう)はプライベートでは彼のことを「竜輝」と呼んでいるが、学校では「天宮」と呼んでいる。紗弥も、彼の家に行った時は「竜輝さん」と呼んでいるが、この場では、それは控えた方がいいだろう。
 こちらに向かってくる二人に対し、紗弥は「天宮さん、鬼城さん」と声をかけた。


(壱之傳 祝祭前夜・END)


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