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作品名:神氣学園清秋傳 作者:ジン 竜珠

第2回 壱之傳 祝祭前夜・壱
 なんていうかね。
 単純骨折ではあったんだが、俺、退院しちゃったんだよね、病院。
 確かに呪術の助けは借りたし、まだギプスしてるけど、有り得ないよね、腕、骨折して、三週間で退院なんて? もしかして、俺、人間じゃないんじゃね?
 それはともかく。
 いろいろあったんだよね。
 例えば、護代理事長が警察に逮捕されちゃったり、グラウンドに穴が空いて、整備に一週間(っていうより「たった一週間」だぞ?)かかった関係で、新輝祭(文化祭のことな)の日程が一週間ほど後ろにずれ込んだり、陸上系の部活の成績が振るわなかったり。
 いや、最後のヤツは必ずしも、グラウンドのせいだけじゃねえと思いたいけど。もしそうなら、申し訳ねえな、鷹尋とかに。
 そうそう、理事長といえば、今度来た人、如月双葉さんっていう人なんだけど、見た感じ、護代元理事長よりも若いんだよね。この学園理事長っていうポスト、もしかして「新人研修」の場なのか?

 それはさておいといて、だ。
 今、俺の周辺はちょっとややこしいことになってる。
 役目は終えたんだが、爺さん曰く「せっかくだから、卒業までそこにいろ」ということで、天宮の関係者は全員、千京市に残ることになった。それは、素直に嬉しい。みんなと一緒に過ごせるのは楽しいし、この街も気に入ってる。学園も、少々アナーキーではあるけど、見方を変えれば豪快でおもしれェし。
 あいかわらず「ミハシラ社員養成機関」に思えて仕方ねえけどな。頼むから、俺が卒業するまで、存続してくれよ?
 まあ、それはいい。そのややこしいことっていうのは、この街の東賀っていう地域にある、俺が住んでいる家のことだ。
 珠璃が同居してるんだよね。俺が利き腕を骨折してるから、生活がたいへんだろうってことなんだが。で、姉貴一人じゃ、俺の面倒を見るのがたいへんだろうからってことなんだが! で、珠璃の気持ちは、すげえ嬉しいんだが!!
 ここに、健全な高校生男子が一人いるっていうのを、忘れねえでほしいな。
 珠璃のヤツ、風呂上がりに、バスタオル一枚で家の中歩き回ることはねえだろ!?
「ボク、ウチじゃ、これが普通だよ?」
 とかいってるが、ここはお前の家じゃねえ! っていうか、姉貴でさえ、パジャマ着てるぞ!?
 ちなみに、実家は「天宮流神仙道」っていうものを伝えていて、その中に秘伝として「房中術」っていうのがある。これって、房つまり閨房(寝床のことだ)での秘術なんだが。わかるよな、早い話「エッチ」のことだ。
 俺の爺さんは宗師って呼ばれてて、一番偉い人っていう意味なんだけど、その血を引く俺は、いずれは家を継ぐかも知れない。まあ、それは最終的に宗師が判断することなんだが、その関係上、俺に恋愛の自由はないし、女子と深い仲になれねえ呪術さえかけてある。
 じゃあ、その秘伝の房中術をどうやって修練するか?
 宗家では、宗師候補が男子だった場合は姉を、女子だった場合は弟を、主に高弟の家系から迎える。それが、房中術修練の相手であり、俺の場合、胡桃(くるみ)姉さんということになる。
 くどくどと長い話になっちまったな。
 つまりだ。俺にとってはエッチも「修行」なのだ。この辺りの事情、珠璃は知らねえからな。
 ていうかな。バスタオル一枚で歩き回るのは「俺を信頼してるから」とか思ったり「からかってる」とかって思ってたんだよ。
 すまん。説明が長すぎた。結論だけいうのはちょっと気が引けたんで、いろいろと言っちまったが。
 昨夜なんだよな、珠璃が俺と二人きりの時、風呂上がりに俺に言ったんだよ。わざわざ眼鏡かけて。
「なんで、押し倒してくれないかな?」
 ……。
 わかる、俺の混乱?
 いや、ね。珠璃のことは憎からず思ってるよ? 実際、クラッてきたしな。
 いやいやいやいや! そういう話じゃねえんだわ!
 まずいから! 風紀上も、修行上も!
 だから、俺はそれとなく「修行中の身だから」と言い訳をした。
「ふうん」
 コイツの勘の鋭さは、もはや神の領域だからな。どこまでごまかせたか。
「それにさ、俺もまだ、腕、完治してねえし」
「……そうだねえ。うん、そうか」
 そう言って、珠璃は部屋へ帰った。


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