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作品名:神氣学園清秋傳 作者:ジン 竜珠

第19回 参之傳 母、また来たる・伍
 その後もご飯に味噌汁、「生麩」を使って肉の脂身に似た食感を出す料理とか、白玉のぜんざいとか。
 普通に昼飯食ってる様に見えるんだけど?
「次は、『接客』よ。そうね、私が『お客様』としてここに来た、ということにするわ」
 そして、いったん玄関まで行く。
 俺たちも一緒だ。
 まず、母さんが靴を履き、玄関に立つ。珠璃が三つ指をついて言った。
「ようこそお越しくださいました。お疲れでございましょう。ごゆるりとおくつろぎください」
 それに応えると、母さんは靴を脱いで上がりかまちに上がると、珠璃がそれをエスコートするように先導する。そして和室の前まで来ると両膝をつき、両手を添えて、少しだけ襖(ふすま)を開けた。一気に開けず、二段階に分けて、襖を開く。
 そこは客間だ。
「なかなか心得てるわね、珠璃さん。それでは最終試験よ」
 と、母さんが目を細め、口元にあやしい笑みを浮かべる。
「天宮の嫁にとって、子をなすことは最重要の責務。あなたにそれだけの『度量』があって?」
 珠璃が身を硬くする。珠璃のそばで、姉貴が、これまた意味深な笑みを浮かべる。
「あらぁ? あの時、言ったことはウソだったのかしら? あたしに宣言したわよね、確か?」
 珠璃が涙さえ、浮かべて言った。
「本当です! ボク……あたしは、子種をいただけるなら、竜輝さんに浮気されても構いませんッ!! たとえ、普通の女性なら許さないようなことでも、あたしは、すべてを許しますッ!! 受け入れて見せます!! いいえ、それすら、歓びに致しますッ!!」
 しっかりと握った二つの拳を、震わせて。
「……ちょっと聞いていい? あんた方、何でそこまで『雰囲気』出してんの?」
 しかし、その言葉に対する回答は、なかった。かわりに、母さんが、俺を見る。母さんだけじゃねえ、姉貴も、珠璃もこっち見てる。珠璃なんか、さっき浮かべてたのは、涙じゃなくて目薬だったんじゃねえか、ってぐらい、さっぱりとした表情だ。
 だから、俺は一言だけ。
「……合格」

 母さんたちは客間で、世間話をして、笑っている。時々声が聞こえなくなるから、ひそひそ話も交えてるんだろう。
 俺はリビングで本を読んでる。
 麻雅祢は、ショートケーキを、はくはくと食っていた。
 こいつだけだな、今の騒ぎにも全然、動じてねえの。
 ああ、人ごとだからかぁ。
 いつもは「感情があんまりあらわれないと、何考えてるかわからないから、まわりは気を遣ってたいへん。だから、なるべくそんな気遣いをまわりにはさせたくねえ」とかって思ってるんだけど。
 でも今はこいつがうらやましかった。
「竜輝、ちょっとこっちに来て! 珠璃ちゃんがお母さんから、お着物をいただいたんだけど、見てあげて欲しいの!」
 客間から、姉貴の声がした。
 俺は本を閉じ、客間に向かった。
 杏さんがいなくてよかったよ。あの人がいたら、もっとややこしくなって……。
 そう思っていると、来客があった。
「珠璃はんからお電話いただきましてなあ。おばさまが、おいでになってはるとか?」
 珠璃のヤツ、いつ、電話してたんだかな。
 いや、この人のことだ、ある程度まで予知できていて、ここに向かってたんじゃないだろうか?


(参之傳 母、また来たる・END)


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