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作品名:神氣学園清秋傳 作者:ジン 竜珠

第16回 参之傳 母、また来たる・弐
 その時、来客があった。
 誰かと思ったら、麻雅祢だ。
「プロトタイプ、持ってきた」
 と、無表情にそんなことを言った。
 時刻は、まだ、午前九時だ。ゆうべの電話じゃ、十時ぐらいになるようなニュアンスだったんだが、こいつもそれなりに興奮してるんだろう。日頃は感情が全然出てこねえけど、こういうところで、それとなく見えるな。
 こいつは、情報を「形」にできるという、かなり特殊な技能を持っている。この理論に基づけば、幽霊さえ、手で触ることのできる存在に変換できることになるんだが、結晶化に近いんで、霊の方がいやがるらしい。
 以前、こいつには「ウルト〇セブン」に出てくる「ウ〇ンダム」みてえな式神が作れねえか、相談したことがあるんだが、ゆうべ「それに近いもののプロトタイプができた」って電話があったんだよな。
 リビングに上げると、俺、珠璃、姉貴のまえで、麻雅祢がポシェットから一辺が十センチぐらいの立方体の黒い箱を出した。
「色々考えた。だから、プラモデルにした」
 こいつは圧倒的に言葉が少ない。だから、聞く側で、補ってやる必要がある。
「ええっと。色々、試行錯誤したら、プラモデルみたいな構造が一番、いいってことになった。……でいいか?」
 コクン、て頷くと、麻雅祢が箱の蓋を取った。
「まだ、単体は無理。主軸になる式神に、従となる式神を従わせるんなら、可能」
「つまり、パーツ毎に式神を組み合わせるってことか?」
 また、コクン。
「イオンも考えたけど、空気が無難」
「……。空気中のイオンを集めて実体化するより、空気を利用した方がいいって?」
 コクン。
「お前、イオン使って実体化とか、すげえ、オーバーテクノロジーだぞ? ノーベル賞どころの騒ぎじゃねえぞ?」
 俺のツッコミに構わず、麻雅祢は箱の中から、六つの玉を出した。
「原料は砂糖。甘い」
 珠璃が頷いた。
「うん、甘いよね、砂糖」
 それはわかってる。
 玉の大きさは直径三センチぐらいか。
「この青い玉が『主』」
 一つだけ青く染められた玉がある。これがメインになる式神ってことか。
「実験」
 そう言って、麻雅祢が庭に向かった。俺たちも、後に続いた。

 庭に出て、麻雅祢が、六つの玉を放り投げた。そして、それが地に落ちると、玉が砕け、風が巻き起こる。その風が収まると、そこに身長二メートルほどの「何か」が顕れた。
 霊眼じゃない、肉体の目でも見える「何か」だ!
「空気中の塵(ちり)が、光を反射してる」
 空気中に漂う塵を利用して、目に見えるようにしてるのか。
 「それ」が、俺の方に歩いてくる。ただ、ちょっとぎこちない。
「単体だと、関節が難しい。物質化の課題」
 こいつの技能は「結晶化」。だから、それを利用して、誰にでも、そして事前準備を必要とせず、すぐに式神を招喚するといった技術確立に取り組んでいる。
 しかも、霊的なだけじゃなく、物体に完全に干渉できる存在を。
 誰にでも扱えて、道士にも使い勝手のいい式神。夢のような存在だ。
 固体を利用した実体化の場合、関節部分が難しいらしんだな。一時は液体の利用も考えたらしいが、空気中では固定率のクリアが難しいという。でも、そこから空気という発想にいくのはスゲえな。
 だが、それでも関節部分が難しいんだな。でも、これだけ動かせれば、実現も遠くないかも知れない。
 俺はその式神に触ってみた。硬くはないが、それでも「なにか」があるのがわかる。姉貴や珠璃も触って、口々に驚いてる。
「空気が、高速でグルグル回ってる。だから、何かがあるように感じる」
 なるほど。しかし。
「なんで、ネコなの?」
「こっちのほうが、かわいい」
「うん、絶対かわいいじゃないか」
「あたしも、これ、かわいいと思うな」
 黙れ、ネコジャンキーども。
 でも、これなら「ウ〇ンダム」の実現も近いかも知れない。
「にゃあ」
 式神が、リアルな声で鳴いた。


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