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作品名:会長の「探偵物語」 作者:ジン 竜珠

第3回
 そんな僕の困惑をよそに、会長はどんどん実況見分(じっきょうけんぶん)、いわゆる実見を続ける。
「ほとんど硬直が始まってないから、死後二時間以内ね。誤差は、室温、年齢による差違も考えて、一時間ってところかしら。爪には微物は……なし、と」
 そして首の辺りを見る。
「顎から後頭部にかけて索条痕あり。このつきかたからすると、紺野さんより背が高いか、紺野さんが跪(ひざます)いている、または座っている状態で、背後からロープのようなもので締めたってことか。吉川線は……。あるってことは、殺人に間違いないわね。第一、紐とか転がってないし」
 次に、紺野さんの下に手を入れ、なにやら唸っている。
「何やってるんですか、会長?」
「見てわかんない? 持ち上げて、御遺体の下を確認するのよ!」
 そう言って、僕をにらむ。
「君、手伝いなさい」
「え? なんで、僕が?」
「……手伝えオラ」
 そう言われて、手伝わざるを得ないところに、会長と僕との力関係を、わかっていただけるだろうか? あと、このサークルが三人しか会員がいない理由も。あと、なんだかんだ理由をつけて、ここに副会長が来なかった理由とか。
 言われるままに、僕は紺野さんを軽く浮かせる。さすがにひっくり返すわけにはいかないから、その状態で、会長は下をのぞき込んで何かを確認しているらしかった。
 紺野さんを元の体勢に戻すと、鼻と口に右手の指をかぶせるようにして、会長は何か考えていたけど、不意に外を見て、大隅さんに尋ねた。
「オーナー。雪はずっと降っていましたか?」
「え? ええ、私が知る限り、ずっと吹雪いていたと思いますが?」
「正面の玄関は、誰にでも施錠、解錠が出来ますか?」
「ええ。一応。鍵は南京錠一つだけですが、万が一の為に事務室の入り口付近に、備え付けてありますし。以前は専用のカードキーで施錠していたんですが、先月、ドアを修理した時、簡単な物に変えました。来月には、専用の鍵ができあがってきますので、その時にやり替えようと思っていたんです。ですが」
 と、大隅さんはドアを指さす。
「外からは、無理です。鍵だけじゃなく、フックを引っかけるようになっていますから」
 見ると、確かにドアの内側にフックがあり、それを柱に掛けるタイプのロックだった。あれじゃあ、外からドアの隙間を使って鍵を開け締めする、なんてことはできそうにない。
 それを確認し、会長はもう一度、考えてから言った。
「オーナー、あなたの権限で、今から言う人物を隔離、いいえ、拘束してもらえませんか?」
 そう言って、ある人物像を告げる。オーナーが首を傾げた。
「それは構いませんが、どうして、そんな人物を? それにそんな方がご宿泊かどうか、わかりませんし」
「直接そうじゃなくても、それに準じる人物像の誰かがいるはずです」
 会長は断言する。
 ……いいのかなあ、一般人がこんなこと言って? ついでにいうと、捜査権限なんてものはないし、当然、逮捕権もない。そんなことを一般人がやったとしたら、それは世間では「軟禁」とか「監禁」とかって呼ばれる、犯罪行為だ。もしそれをオーナにさせたら、それは教唆(きょうさ)犯ってことになるし、僕だって「共謀共同正犯(きょうぼうきょうどうせいはん)」に問われかねない。そのぐらいは、二時間サスペンスファンとして、容易に想像できる。
 僕が何かを言いかけた時。
「文句があるなら聞くだけは聞くけど?」
 ……つまり、聞くだけで、行動をどうこうする気は全くないってことだ。
 オーナーは。
「わかりました。そのように手配しましょう」
 おおぉおい、大丈夫ですか、オーナー! 今、この女の人は「あなたの権限で」って、ほざきましたよ!? さりげなく、あなたに全責任を押しつける気ですよ? ちょっと冷静になってもらえませんかね!? ペンションって、でっかい船なんかとは違いますから、たとえ、そこの主(あるじ)でも警察権は一切ないんですけど!?
 ……うん、心の中でなら言えるんだけどね。なんていうか、会長がさりげなく、本当に本人にしてみれば、どうということはないんだろうけど、さりげなく口にした、
「邪魔すんじゃねえぞコラ」
 っていう言葉に、僕は金縛りになってしまってたわけだ。


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