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作品名:会長の「探偵物語」 作者:ジン 竜珠

第2回
 雪は、相変わらず吹雪いていた。ちょっと外に行くぐらいならできそうだけど、遠出は自殺行為だろう。だから、建物のどこかに……。なんて思ってたら、すぐに見つかったわけだ。間接照明のともった談話室の、ほぼ中央にうつぶせになっている一人の男性の姿を!

 どうやら、僕は、よっぽど間抜けで大きな悲鳴を上げてしまったらしい。すぐに人が集まってきた。ペンションのオーナー夫婦、その手伝いである、二人の女性(オーナーの身内らしい)、力仕事専門でここに雇われている若い男性。そして、宿泊客全員。宿泊客の大半はまだ起きていたそうで、中には相部屋になった人と意気投合して、飲み明かそうとしていた人もいた。
 うつぶせになっていた男性は、着ている服から、紺野さんだとすぐにわかった。それに、ここにいないのも紺野さんだけだ。ただ、頭部に、テーブルにあったクロスが掛けられていたけど。
「その人、死んで……る、の?」
若い女性……僕や会長と同じ、大学生だという日比野さん(ひびの)さんが震えながら言った。
 雰囲気からして、生きている感じはなかった。その時、会長が、紺野さんにずかずかと近づいて言った。
「オーナー、警察に電話は?」
「一応、しましたけど、この天候ですからね。早くても朝にならないと、山道を上がってこられないようで……」
「ということは」
 と、会社員だという四十歳ぐらいの男性、中本さんが呟いた。
「朝まで『殺人犯と一つ屋根の下』なわけか」
 その言葉に悲鳴を上げたのは、OLさんだという津島さんだったかな?
 その直後、会長がパンパンと手を打ち鳴らした。
「皆さーん、ここから中には、入らないでください! 現場を荒らすわけにはいきません! それから、各自、部屋に戻ってください! あ、でもオーナーは残ってくださいね、いろいろと確認しなきゃならないこともあるので」
 なんで会長がこの場を仕切っているのか、誰も疑問に思わなかったのが、僕には不思議でならなかったけど、それだけの「勢い」というか「雰囲気」を会長が持っているのも確かだった。
 で、「それぞれが、相手を見張るように」なんてことを、遠回しに言っていたけど「パニックにならないように」とか、言外に「犯人だった場合、逃亡したり自殺したり、なんてことがないように」みたいなことを匂わせていたから、みんなもなんとなくわかってくれたらしかった。
「さて、と」
 と、会長はズボンのポケットから、白い手袋を出した。
「……なんで、そんなものを?」
 僕が首を傾げると、会長は当然だと言わんばかりに、
「備えあれば、憂いなしよ」
 と、答えた。
 白手袋がなかったからといって、どんな憂いがあるのか、聞いてみたかったけど、そうするだけの勇気を、あいにく僕は持ち合わせていない。
 会長は、まずクロスをどけて倒れている人を確認した。僕に「確認して」なんて言ってくる。
「やですよ、そんなの。恐いじゃないですか」
「うるさいわねえ、さっさと確認しなさい!」
 なんてことを言いながらも、会長だって、見てないじゃないか! って言い返したかったけど、まあ、無理なんだよね、僕には。
「あのう、それでしたら、私が」
 と、オーナーの大隅(おおすみ)さんが言ってくれた。オーナーが「間違いありません、紺野様です」と答えると、会長はクロスをかけ直し、合掌した。
 で、ここまでの時点で、僕は思ったわけだ。
 頭や足にキャップやカバーをつけず、マスクも掛けず、手袋をしているとはいえ、クロスをどけたりする。
 これって、十分「現場を荒らしている」んじゃないかなあ。髪の毛とか、唾液とか、ここに残っちゃったり、逆に会長の服についたりしてどこかにいっちゃったら、警察の人が困るんじゃないかなあ。
 鑑識作業の時に、大騒ぎにならなきゃいいけど。


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