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作品名:「クズの寄せ集め」Episode.1 作者:ジン 竜珠

第3回 Episode1ー2
 野添は、ずかずかと歩み寄り、沢渡を押しのけるようにして、立った。
「社長、沢渡くんの提言は、粉飾決算です! 二重帳簿です! それがバレたら、融資どころか、我が社は一気に信用を失います!」
「……だから、何かいい手はあるのか、って聞いているんだ」
 それほど声を荒げたつもりはなかったが、ちょっとばかり、野添はひるんだようだ。だが、すぐに立ち直って言った。
「事業を縮小しましょう」
 沢渡が鼻で笑うように言う。
「それぐらい、誰だって考えますよ。でも、それどころじゃあどうにもならないレベルにまでなっているんです。それぐらい、知らないわけじゃないでしょう?」
「社員も当番制にして、人件費を抑えます。その分、苦しみを強いることになりますが、今は堪え忍ぶ時期です!」
「バカか、お前は!」
 つい、怒鳴ってしまった。以前から思っていたことが、ついに出てしまった。
「そんなキレイ事は、いいんだよッ! とにかく、この局面をどうにかしなきゃ、話にならないんだ!!」
「社長!!」
 まだ何か言いかける野添に対して、竹野は言った。
「いいから、出てけ! この部屋から、即刻、出て行け!!」
 こぶしを握り、何かを言いかける野添だったが、ため息をつき、部屋を出て行った。
「沢渡、その方向で話を進めてくれ」
 怒号を発した勢いの余韻に引きずられたかのように、竹野は沢渡に言った。
 口の中が異常に苦かったのを覚えている。

 あの時に決まってしまった、といっても過言ではない。他の社員の良識で、粉飾決算、二重帳簿という事態は防げた。だが、気づくと、いくばくかの使途不明金、沢渡の失踪、信頼を置いていた社員の離反。さらに野添を解雇したが、それと同時に彼と繋がっている人脈も離れていった。
 結果として会社を潰さざるを得なくなり、竹野も「社長」ではなくなった。
 この状態で負債が二千万円程度で済んだのは、奇跡といってもいい。だが、竹野にそれを支払うだけの経済力はなかった。そんなわけで、七、八ヶ月ほど前から、竹野は債権者から身を隠す生活を続けている。
 その夜、やはり逃げた先で、竹野は一件の喫茶店を見つけた。
「TRASH ぼっくす」
 なんとなく「隠れ家」風であり、実際、隠れたスポットかも知れなかった。もしかしたら「一見(いちげん)さんお断り」なのかも知れないが、ちょっと一息つきたい。そういえば、喫茶店に入らなくなって、もう半年以上経つだろうか。
 一瞬、とまどうところもあった。もしかしたら、債権者の誰かがこの店内にいるかも知れない。そんな偶然、ないとは思ったが、有り得なくもない。だが、それよりも人心地つきたい方が勝り、竹野は店内に入った。


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