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作品名:炎の錬金術師匠・全 作者:ジン 竜珠

最終回 炎の錬金術師匠・全
「今日まで辛い修練に、よくぞ耐えてきた。今日はお前に、秘伝を伝えようと思う」
 ある朝、錬金術の師匠は弟子を道場に呼んで、そんなことを言った。
 これまでの修行が弟子の脳裏をよぎる。腕立て伏せに始まり、走り込み、料理、瞑想に、見たことも聞いたこともない呪文の練習、果ては呼吸の訓練。
 どう考えても弟子が思っている「錬金術」とは無関係なことばかりをやって来たが、この、白い髪に同じく白いヒゲをたくわえた、どこぞの鶏肉の唐揚げのフランチャイズ店の、その店頭に立っているおっさんを長髪にしたような、この老人は、この世界では有名な人らしいから、頼み込んで、弟子にしてもらった。
 弟子の頭に、錬金術を会得してみたら、やりたいことがリストアップされていく。
 金を精製できたら、とりあえず、それを元手にして宝くじを大量に買ってみたい。どこかの企業の未公開株を買い込むのもいいかもしれない。インサイダー取引きに引っかかるのはまずいが、ギリギリのラインで踏みとどまる自信はある。あと、超有名店のザッハトルテも食べてみたいし、食べないうちにいつの間にか店頭から消えてしまった、カヌレ・ド・ボルドーとかいうお菓子も食べてみたい。遠方にある有名ラーメン店は、朝から行列が出来るそうだから、近くに泊まり込むことになるだろうが、それだけの費用も捻出できるだろう。国民年金だって、支払えるし、滞納している国民健康保険税も、全部支払えるに違いない。
 そんな期待に胸躍らせていると、おもむろに師匠が言った。
「世間では、錬金術を、大きく誤解しておる。錬金術とは、金を作り出す冶金技術(やきんぎじゅつ)にあらず。否! そのような俗な技術ではない! まさに、神秘学の極みなのであるッ!!」
 そういえば、そもそも化学の講義なんぞ、全くなかったのが気にはなっていたが、そんな観念論はどうでもいいから、早く錬金術の技術を教えてほしい、と弟子は思った。
「そもそも、錬金術とは、金を作る冶金術にあらず、己(おの)が身体(からだ)を、精神を、決して滅びぬ『黄金』へと変成させる、神秘学、いや、錬(れん)! 金(きん)! 道(どう)ォォォォォォォォォォ!!!!!!!! なのであるッ!!」
 決して滅びぬ、とかって言ってるが、じゃあ、王水(おうすい)はどうなるんだ、なんてことは、とりあえず思った。
 この際、賢者の石、いや、せめてパナケイアの生成方法だけでも教えてはもらえないだろうか? 死さえ克服する賢者の石ほどではないにせよ、多くの病気を治せる薬なんて、使い道が多すぎて困るぐらいだ。
「うむ、困惑しておるな、顔に出ておるぞ。……よかろう、見るがいいッ!!」
 叫ぶやいなや、師匠が右手を天高く突き上げる。すると、その腕が黄金色(こがねいろ)に輝き始めたではないか!
 素直に、スゴいと思った。もうパナケイアもいいから、その芸当でも教えてはもらえまいか? そんなことができれば、とりあえず、一発芸として売り出せそうだ。地元のテレビ局にでも売り込んでみよう。
 そう思って口を開きかけた時、何を思ったか、師匠が、壁まで歩み寄り、その腕を壁に突き込んだ。そして。
「……うむ! 純金は粘りがあって、やわらかいことを忘れておった。抜かったわ」
 壁は破れなかったらしい。というか、変な方向に腕が曲がっていた。あの状態で腕が元に戻ったら、どんなことになるのだろう。
 その後、この師匠と弟子がどうなったか、知るものはないという。


(炎の錬金術師匠・全 END)


あとがき:だから、苦情は一切、受け付けないってば!!


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