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作品名:「SagaV 神氣学園滅神傳」 作者:ジン 竜珠

第49回 漆 終幕之傳
 俺が気がついたのは、どうやら、病院のベッドらしかった。ふと傍らを見ると、心配そうに俺を見る姉貴、そして、珠璃。
 珠璃は俺を見て舌打ちをした。
「チッ。『眠り姫』を起こすのは、ボクの役目だと思ったのに」
「誰が眠り姫だゴルァ」
 俺の軽口に、姉貴が笑みを漏らす。
 姉貴の話によると、というか、姉貴が聞いた話によると、ある時点で、いきなり妖魔たちが消えたらしい。そこで、零司さんや冥神のメンバーがあちこちを探索したところ(その時、警備員さんたちが「妙な昏睡状態」になっているのを発見したそうだ)、グラウンドの中心辺りで昏睡状態になっている俺と珠璃を発見した、とのこと。どういうことが起きたのか、詳細はわからなかったそうだが、俺たちの周囲、十メートルほどが、まるで爆撃を受けたかのような、といってもそれは地下から爆破されたかのように土が盛り上がっていたそうだが、円形になっていたそうだ。
 珠璃は一日後に目を覚まし、俺は三日ほど眠り込んでいたらしい。俺の体の傷はあちこちにあったが、右腕と、アバラが二本ほど、骨折していたそうだ。幸い単純骨折で、複雑骨折ではなかったものの、医者からは絶対安静が命じられているらしい。それでも、医者曰く「人類史上、有り得ないスピード」で傷がふさがり、骨も修復していってるそうで、早ければ二週間もすれば、退院できるだろう、とのことであった。
「十一月早々には、新輝祭つまり文化祭があるからね、早く治してよ?」
 と、珠璃が無茶なことを言う。
「そんな簡単に骨折が治せるかって」
 俺の言葉を、しかし、珠璃は聞いちゃいねえ。
「キミと一緒に、いろいろ見て回るのを楽しみにしてるんだからさ」
「お前こそ、生徒会の仕事があるんじゃねえのか?」
「それは心配ない。そのために風紀委員会や学生会があるんだし」
 さりげなく不穏な発言があったようだが、ここは聞かなかったことにしておく。ていうか、その方がいいだろう。
 姉貴が俺の額にかかる髪を分けながら、言った。
「夕方には、響堂くんたちもお見舞いに来るそうだから、何かお菓子でも用意しとこうか?」
 なんとなく、「お茶会」になりそうな気がして不安なんだが、ていうか、個室みたいだけど、ここに怪我人が一人いるんだが、っていうより! 病院には迷惑にならないんだろうか!?
 俺のそんな考えを読んだかのように、姉貴が笑顔で言った。
「大丈夫、この病院にも『冥神』の人とか、天宮の人がいるから」
 やべ、なんか、姉貴が珠璃に似てきた。もともと姉貴がそういうパーソナリティーだったのか、珠璃の感化力がとんでもねえレベルになってんのか、そもそも、爺さんの弟子だからなのかよくわからないが、俺の周囲には「そんな」人ばっかりが集まってるような気がしてならない。
「類は友を呼ぶ、ていうだろ?」
 珠璃が、そんなことを言う。
 お前、それ、もはや直感でも何でもなくて、心、読んでるぞ? マジで恐ェんだけど。
 なんにしても。
「……終わったわね」
 姉貴が穏やかな声で言った。
 そう、すべては終わった。だから、本来なら俺がここに留まる必要はないんだが、せっかくだし、このまま学園生活を満喫してもいいんじゃないか、て気にもなっている。
「宗師のご判断次第だけど」と姉貴が言った。
「お姉ちゃんとしては、このまんまでもいいと思うな」
 確かにそうだ。せっかくここでの生活が楽しくなってきている。仕事が終わったから、ハイさよなら、じゃ、味気ないにもほどがある。
 俺は黙って頷いた。

 これから、本当の意味で「俺の人生」が始まる。それをどんなものにするか、それはすべて俺次第だ。だが、俺にはその道を一緒に歩いてもいいと思える人がいる。そして、かけがえのない仲間がいる。ここに来て過ごした日々は、それまで過ごした十数年よりも遙かに短かったが、遙かに濃密で充実したものだった。

 ……と、こんな感慨にふけっている場合じゃない。
 まずは、傷を治さねえと。


(神氣學園滅神傳・了)


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