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作品名:「SagaV 神氣学園滅神傳」 作者:ジン 竜珠

第46回 陸之傳 大祓・参
 ここは、おそらく話に聞いた地下空洞だろう。だが、少しも暗いことはなく、むしろ明るかった。その理由はすぐにわかった。まばゆい輝きを持った無数の何かが、天井や壁、地面に張り付いて、さながら、この空間を昼間のようにしているのだ。
 そして、俺の前方、十メートルの辺りに、一人の女が立っている。女は白い肌に黒い長髪、そして黒い狩衣をまとっていた。美人といっても差し支えないと思うが、それはどこか冥(くら)く、喩えようもないほどの「負」の「何か」に満ちている。
 女が俺たちを見て言った。
「ほう。汝(うぬ)は、いつぞやの」
 向こうは俺に見覚えがあるらしい。ということは、十中八九。
「黄泉津大神と、お見受け申し上げる」
 俺の言葉に、女が高笑いした。
「汝には、一度、煮え湯を飲まされておったなあ。よもや、ここで、その礼が出来るとは思わなんだぞ?」
 とりあえず、丁重に言ってみた。
「ここは、貴(き)神(しん)のような御(おん)神(かみ)が、お出ましになるようなところではございません。速やかに御座所へとお帰りいただければ、有り難いのですが」
 黄泉津大神がまたもや哄笑する。
「それは出来ぬ相談じゃ! そもそも、妾(わらわ)をここへと招魂したのは、汝らではないか」
 もっともだ。だが、死の女神をこのまま「外」へ出すわけにはいかない。
「そうですか、それなら」
 と、俺は刀を上段に振りかざし、咒力を込める。黄泉津大神が俺を見た。
 ……かかったな。
 俺が走り出すのと同時に、珠璃が、小声で唱えていた神歌に咒力を込め、送魂の咒を唱える。
「モトツミクラニ、カエリマシマセ!!」
 珠璃から強烈な咒力が噴き出す。そのタイミングに合わせ、俺はスライディングの要領でイザナミの足下に滑り込んだ。
 珠璃から発せられた咒力が、イザナミを包む。だが。
「何をしたいのじゃ、汝らは?」
 イザナミは平然と立っていた。まあ、ある程度は予想していたんだがな。だから俺は、そのまま全身をバネにして、七支刀をヤツの腹部から切り込むように、振り上げる。だが、最小限の動きでそれをかわすと、イザナミは俺に対して、掌底を撃ってきた。
 鈍くてイヤな感じの氣が俺の全身を包む。なんとかそれを振り払って、俺はイザナミと距離を取る。
 すかさず、イザナミが口から黒い炎を吐いた。それを斬り裂いて、再びイザナミに迫るが、何をするわけでもないのに、イザナミがひと睨みしただけで、俺の周囲の空気がひび割れた。ガラスの割れるような音が俺の耳にだけ響き、全身に痺れるような衝撃が走る。なんとか横飛びに跳んでかわしたが、結構、ダメージが大きかった。
 今、珠璃は「黄泉津御柱祝詞」の奏上に入っている。「御柱を閉じ給う祝詞」を終え、祝詞を完成させるまで、なんとか時間を稼がないとならねえ。俺は再び、刀に咒力を込め、わざと、イザナミの背後に回り込むように走る。イザナミが首を動かし、俺の動きを追う。そして、俺は姿勢を低くし、再び、ヤツの懐に入る。だが、刀を突き刺そうとしたところで、イザナミの姿が消える。
 どこへ行ったかと思う間もなく、イザナミが俺の前に再び現れ、俺を殴り飛ばした。
 かわせなかった。
 豪快に飛ばされ、俺は地に転がる。しかし、なんとか刀を杖にして、立ち上がり、刀を構えて、駆ける。
 また、イザナミが消えた。今度は俺も全身に氣を巡らせ、見えざる障壁を作る。
 その障壁を簡単に突き抜けて、イザナミの腕が俺の首を締め上げた。
 苦しさに、呼吸が止まりそうになる。だが、ここで倒れるわけにはいかない。俺は刀を逆手に持ち替え、背後にいるイザナミに突き込んだ。
 手応えが、まったくなかった。その時、天井から、耳障りな高笑いが響いてきたのだ。突然、俺の目の前に逆さ吊りになったような、女の顔が現れた。
 イザナミだ、と気づくより早く、足が俺を蹴り飛ばす。
 どう考えても、物理的に有り得ない位置からの攻撃だ。もし物理的身体による攻撃だとしたら、ヤツは俺をグルリと取り巻くような形になっているとしか思えない。
 つまりは、そうだ。俺が相手にしているのは、物理的な常識が通じる相手ではないのだ。
 地面に転がった俺は、それでもなんとか、立ち上がる。頭に傷が出来たらしい。流れ出る血で右目が開けられない。
「座興もここまでじゃ」
 そう言うと、イザナミはいつの間にか、珠璃の背後に立っていた。


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