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作品名:「SagaV 神氣学園滅神傳」 作者:ジン 竜珠

第45回 陸之傳 大祓・弐
 向かってきたのは百足に似た、四メートルはありそうな妖魔だ。だが、零司には、神歌を唱えている余裕などない。咒力を込めた右腕を振り上げ、拳を突き上げる。しかし。
「やっぱり、完全じゃないか」
 零司は、ある理由から、咒力を四肢に込める体術が苦手だ。正確には、心理的ブロックがかかっている。この夏あたりから、徐々に咒氣を通せるようにはなっていたのだが、実戦に耐えうるレベルではないようだ。
 そう思い、ポケットから、咒具を取り出す。鳥が翼を広げたような形状のそれは、五センチほどだろうか、夜にあってさえ、なお、銀光を輝かせていた。
「祓い給え清め給え!」
 気合いとともに、百足の腹部に投げつける。咒具から伸びた、ピアノ線にも似た特殊繊維に咒氣を通すと百足が霧消した。
 だが、一息ついている場合ではない。次なる妖魔が向かってくる。今はここで、妖魔たちを引きつける必要がある。零司は身をひねって、咒具を妖魔に投げつけた。

 杏は妖魔たちをここに引きつける、正しくは他へと行かないようにする為の「咒」を唱えていた。そこへ、狼のような妖魔が襲い来る。だが。
「させるかッ!」
 気合い一閃、五十村蛍矢(いそむら けいや)がその狼めがけて跳び蹴りを食らわせる。一撃で妖魔は消滅したが、その背後から三メートルはありそうな、クラゲに似た妖魔が迫ってきた。短く息を吐き、相手の周囲の空気ごと巻き込むように体(たい)をひねって、相手を投げ飛ばす。
「屋敷ッ!」
 投げ飛ばした先にいるのは、冥神の屋敷穂津深(やしき ほづみ)。向かってきたクラゲの化け物を器用に捌(さば)いて、地に叩きつけて消滅させた。
 それを横目で確認すると、五十村は、次なる妖魔を相手にする。今度の相手は何の動物が元になっているのか、ちょっと見当が付かない。もしかすると、「アチラ」の世界の生物が元になっているのかも知れないが。
「祓っちまえば、おんなじだ!」
 言うなり、五十村が二メートル先の敵に向かって、気弾を撃ち込んだ。

 鷹尋は「風」の氣をまとい、敵の周囲や、集団の中を駆け巡る。そうするだけで、相手は風の障壁に閉じ込められるかのように、動きを封じられていく。そして。
 あたりの空気が突然、硬質なものに変わった。まるで凍りつく音さえ聞こえてきそうなほどだ。直後、本当に何かが凍り付くような感じがして、地面から、周囲から、そして空から、槍のような細長い物体がいくつもいくつも妖魔の集団に襲いかかり、串刺しにした。悲鳴というには、あまりにも奇異な声を上げて、妖魔たちが消滅する。だが、今、その術を行使した少女・麻雅祢に、西洋のグレートソードのそのものの形をしたモノが躍りかかる。同時に。
 気合いとともに、拳(こぶし)が文字通り、宙を飛んできた。栂が放ったオーラだ。拳型のオーラは、グレートソードを砕いただけでなく、その向こう側にいた、四メートル近くある人型の妖魔の腹部を貫いて、燃え上がらせた。
 それを確認して、鷹尋は再び妖魔を風の障壁に閉じ込めていく。

 直径三メートルほどの、ボーリングの玉としか表現できない妖魔に、咒具を巻き付け消滅させた零司の目の前に、人間大のコウモリの形をした妖魔が墜落してくる。それを蹴り上げて咒具を投げつけると、咒氣を一気に放射した。コウモリだけでなく、傍にいた鳥形の妖魔も数体、消滅する。すると、背後から「何か」が襲いかかってくる気配を感じて、咄嗟に跳びのく。その場に、五メートル近い大きさのカマキリの鎌が振り下ろされた。そのカマキリに、人間ほどの光球が激突し、電子音のような音を響かせてカマキリを消滅させた。光球の中にいる人物が言った。
「『咒』は、もう、終わりましたえ。これで、心置きなく暴れられる、いうことです」
 その言葉に、五十村が苦笑いで言った。
「おいおい、『後始末』する方の身にもなってくれよ!?」
「『冥神』いうのんは、そういうのの、エキスパートやと、竜輝はんから伺(うかご)うておりますけどなあ」
「あの坊主、帰ってきたら、小言じゃ済まさねえぞ!」
 そんなことを言いながら、五十村は右腕から、三日月のような光をいくつも撃ち出した。
 零司も咒具で複数の妖魔を縛り、消滅させながら、グラウンドの方を見て思った。
 帰ってこいよ、竜輝、珠璃ちゃん!
 それは、口にはしないが、おそらくここにいる全員の思いだった。


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