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作品名:「SagaV 神氣学園滅神傳」 作者:ジン 竜珠

第40回 伍之傳 落日・壱
 考えてみれば、道理だった。
 御柱の封印に使える、というのであれば、それに関連した何かにも応用できるというもの。
 ここは、平屋建ての、ある民家。人が住まなくなって久しいらしいが、手入れは行き届いており、誰かが住んでいてもおかしくはない。
 この民家があるのは、菱森山の山頂近く。うっそうとした林の中にあり、また、いわゆる「ハイキングコース」からも離れているため、地理を知っているものか、よほど注意深くないと、この建物に気づくものは、ないだろう。
 時刻は、そろそろ午後十時になろうとしている。そして、今、この家の前に、天宮流神仙道の別津五大高弟が揃っていた。
 彼らは、それぞれ、六十センチメートルほどの長さを持った、両刃の鉄剣を手にしている。これはもともと「黄泉津御柱」を封印する時に使われていた剣だ。詳細は伝えられていないが、五人が霊視・霊査を繰り返して、ようやく復元することが出来た。この剣は、もともと御柱の封印を解き、中に眠る伊弉冉尊にお出まし願うためのものであった。しかし。
 五人のリーダー格ともいえる、磐(いわ)坂(ざか)空心が剣を家の扉に向けていった。
「ここに、御柱を遠隔呪術で封印しているものがある。ここには、わしも知らぬ呪術が施してあって、中に入ることは叶わなんだが」
 満足げな笑みを浮かべ、その剣で何かを空中に描く動作をした。それにあわせ、他の四人も、何らかの呪符らしきものを空書する。
 その途端、空気が歪んでいくような眩(げん)暈(うん)感が磐坂を襲う。だが、それも一瞬のこと。不意に「視界が開ける」ように起きた、清(すが)しい感覚に、磐坂が哄笑する。
「やはり! やはり、そうであったか!! これは、ここの封印を解くのにも使えたのだ!!」
 四人も心なしか、喜んでいるような表情だ。
 磐坂を先頭に、五人が引き戸を開けた時だった。
 不意に電灯が点り、三つの人影を浮かび上がらせる。
「遅かったではないか。待ちかねたぞ」
 そこにいたのは、紫色の、狩(かり)衣(ぎぬ)に似た装束の男。紛う方なき、天宮流神仙道宗師・天宮瑞海であった。瑞海宗師は、口元に笑みを浮かべている。何もかも見抜いている、そう言いたげな笑みであった。
 驚きのあまり、一瞬、磐坂の呼吸が止まる。否、おそらく、他の四人も同じではないだろうか。
 そして、宗師の横にいる壮年の男は、確か、宗家の補佐をしている佐久田家の男で、名は白(はつ)鶴(かく)といったか。
 脇で片膝立ちになり、日本刀を捧げ持った、作務衣の男は、名も顔も知らぬが、ここにいるということは、それなりに実力を認められた弟子かも知れない。
「千京市に、別津五大高弟が勢揃いしておるというのは、尋常な事態ではあるまい。申し開きがあるなら、聞いてやらぬこともない」
 申し開きも何も、ここにいるということは、瑞海宗師は磐坂たちの動きを察知していた、ということにほかならない。「そんな馬鹿な」と磐坂は思った。自分たちの動きは、悟られていないはず。剣の鋳造も、わざわざ遠方の刀工に依頼したし、咒字を刻み込む時は、他人に任せず、自分たちで行った。
 気取られるようなことは、どこにもなかったはずなのだ。
「痴(し)れ者どもめ。他人に悟られぬよう行動したつもりであろうが、用心するあまりの行動そのものが、不審であったと知れィ!」
 瑞海宗師が一喝する。そして。
「まずは、その剣を始末させてもらうぞ」
 言いながら、傍らの男が持つ日本刀を抜く。冴え冴えとしたその刀身の輝きは、なんらかの霊剣なのかも知れぬが、おそらくは瑞海宗師の「氣」を流したが故の、人智を超えた輝きであった。
 半(はん)身(み)になって、剣を右手に構え、気合いもろとも右脚を踏み出すと、宗師は一気に刀を突き出す。
 一体、何事が起こったか?
 風が起きたわけでもないのに、体が吹き飛ばされそうな圧力が襲いかかったかと思うと、五人が手にしている剣が、一本残らず、粉みじんに砕け散ったではないか!
 もはや、何も言うことは出来なかった。これだけのことを、事も無げにやってのける天宮瑞海という男は、一体、何者なのか……?


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