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作品名:「SagaV 神氣学園滅神傳」 作者:ジン 竜珠

第39回 肆之傳 Count down・陸
 風を薙ぎ、地を震わせる。裂帛の気合いとともに、栂は一度の跳躍で間合いを詰める。咒氣を込めた右の拳が、怪物の腹部にめり込む。
 栂は頭を下に振り下げ、その反動を利用した左脚を、よろけた怪物の首を刈るように、振り上げる。寸分違わず、回し蹴りがヒットした怪物は、耳障りな声を上げ、二、三歩後ずさる。
 そのタイミングを予測していたかのように、栂は回転を利用して右肘を怪物の腹部にたたき込んだ。
 怪物も抵抗らしきものを見せるが、実力の差は明らかであった。西谷との戦いがあった、というのを割引いても、力の差は歴然であった。
 怪物の動きは、本能の闘争行動にも近いもの。それに比し、栂は「戦闘テクニック」を持っている。栂は相手の動きを読み、確実にダメージを与えていった。
 ものの五分程度で、怪物は、もはや立っているのがやっとという状態となっていた。
 満足に動けなくなった怪物に向かい、栂は印を組み祝詞を唱え始める。
「掛けまくも畏(かしこ)き、皇(すめ)御(み)祖(おや)、神伊弉諾尊、身添気(みそげ)祓い為(な)しませる時、……」
 栂が祝詞を奏上する中、怪物が人間の姿に戻っていく。その人間は男だった。右腕は健在であったが、一見して、もう使い物にならないであろうことは、人間の肘の可動域外に腕がねじれていることからも明らかであった。
 人事不省に近い状態であったが、それでも男が呻いて、何かを嘔吐する。胃液に混じって、琥珀色の何かが地に落ちる。
 そのまま糸の切れた操り人形のように、へたり込んだ男に対し、栂は次なる神歌を唱えた。
「カシコクモ、コノカシワデニ、オホカミノ、モトツミモトニ、カヘリマシマセ」
 栂の柏(かしわ)手(で)に、ゆっくりとだが、男が目を開ける。
「浦田さん?」
 栂が声をかける。だが、男は焦点のあわない視線を宙にさまよわせるだけで、一向に応えない。
 それを見て何を思うのか。栂は竜輝たちに向き直り、一礼した。
「お騒がせ致しました」

 ことは、思えば、あっさりと済んだ。
 こういう荒(あら)事(ごと)は、やっぱり冥神の人たちに任せるべきなんだろう。
 だが、今、目前にあることは違う。俺が、片付けなければならないことなのだ。
 俺は珠璃とともに、学園に戻っていた。
 特に行事があるわけでもないのに、グラウンドや校舎におよそ人影はない。まるで、何かが起きることを察知した動物が、一斉に避難行動を取ったかのようだ。
 俺は珠璃を見て、静かに言った。
「……頼めるか?」
 珠璃も決意したように頷く。
 そして、珠璃が眼鏡を外し、呼吸を整えて印を組んだ。


(肆之傳 Count down・END)


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