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作品名:「SagaV 神氣学園滅神傳」 作者:ジン 竜珠

第38回 肆之傳 Count down・伍
 西谷は、今ひとつ、攻めあぐねていた。あの、サソリのような尾、節(ふし)が伸縮するようで、思った以上にリーチがある。毒を持っているか、そこまではわからないが、不用意に近づかない方が無難だろう。気弾を撃ったり、右腕の剣を伸ばして隙を作ろうとするものの、あの怪物のもともとの能力か、あるいは「賦与された」能力なのかは不明だが、巧みに呪力を逸らしたり、相殺してくる。
 結果、双方ともこれといった決め手を出すことが出来ないでいた。
「結界は、もってあと二十分ぐらいか。早いところ、決着をつけたいんだが」
 ふと、視界に入ったスマホの画面には「20・00」の表示があり、すぐに「19・59」に変わった。
 わずかに逡巡したが、ふと決意したように頷くと、西谷は咒を唱える。
「消耗するから、あまり使いたくはなかったが……。天(てん)清(しよう)浄(じよう)、地(ち)清(しよう)浄(じよう)、内(ない)外(げ)清(しよう)浄(じよう)。生(いく)魂(たま)、足(たる)魂(たま)、玉(たま)留(とまる)魂(たま)! イィィィィエィィッ!!」
 ある種の「ショートカット」の咒である。気合いとともに、全身に氣力と呪力を巡らせる。その反動で、制服に電撃に似た衝撃が走る。肩口が少し破れた。
「参ったな、官給品、つまりは税金なんだが」
 破れを見て、少しだけため息をつくと、西谷は拳を構える。その拳はオレンジ色の刃(やいば)から、青く輝く球体に包まれていた。
「祓え給え、清め給え!」
 そして相手に対して半(はん)身(み)に構え、後ろ側の足で地面を蹴ると同時に、素早くその足を前の足に引きつける。そして、さらに足で地を蹴って跳躍する。
 おそらく、怪物には西谷が消えて見えたのだろう、首をあちこちに回して、何かを探しているようだ。
 ようやく気配に気づいて、怪物が空に目を向ける。
「遅いッ!」
 気迫とともに、西谷が弾丸となって怪物の脳天に拳を落とす。爆撃のような轟音と、衝撃が空間を支配した。
 消滅しただろう。そう確信し、身をひねって着地すると、西谷は怪物のいたあたりを見た。舞い上がる土砂が風に吹き散らされた時。
「……おいおい、嘘だろ」
 そこには、怪物が、立っていた。さすがにサソリの尾はちぎれ飛び、右腕は肘から先がなくなっていたが、それでも怪物は健在だった。
 これが効かなかったとすると、相手は想像以上の難物だ。ひょっとしたら、今のと同じだけのエネルギーを、あと三発ぐらいは食らわせないと、倒せないかも知れない。
 打ち止めといってもよかった。あと一発ぐらいなら撃てないこともないが、それには少々、時間がかかる。今日、自分がここに待機することは、冥神のメンバーは知っているはずであるから、そのうち「増援」が来るだろうが、それまでの時間を稼ぐ必要があった。
 痛みと怠(だる)さの残る体に鞭(むち)打ち、ファイティングポーズを取った時だった。
 何者かが、この結界に侵入してきたのだ。
 一瞬、冥神の増援かと思ったが、気配が違う。振り返ると、そこには六人の高校生。直接あったことはないが、写真等で顔は知っている。内、一人は宗家が「最終兵器」と呼んでいる少年だ。
 宗師の孫だという少年、天宮竜輝が拳を構える。
「加勢します!」
 有り難かったが、高校生たちをこの戦いに巻き込むことは出来ない。冥神のブリーフィングの時、彼らが新輝学園に関連している邪魂を退けた、という話は聞いているから、実力は問題ないだろうが、それでも年端もいかない少年たちを戦いの場に引きずり込むというのは、矜(きよう)恃(じ)が許さない。
「お気持ちは有り難いんですが」
 と言ったところで、もう一人、結界に入り込んできた者がいる。
 栂(つが)亨(とおる)。冥神の一員だ。
「申し訳ありません、竜輝さん。ここは我々、いや、私に任せてもらえませんか?」
「え? 栂さん、どういう意味ですか?」
 宗師の孫の言葉に、一瞬、何か考えたようだが、栂はしっかりとした口調で言った。
「これは、私にも責任があることなので」
 確かに、冥神には学園を中心として、この街で起こる怪異を、速やかに鎮める責務がある。だが、今の栂の言葉は、言外に「自分個人に責任がある」というニュアンスをにおわせていた。
 どういう理由があるのかわからないが、栂はこの怪物討伐に、何らかの個人的な責任を感じているらしい。それを察して、西谷は下がった。
 栂が怪物を見て、静かに言った。
「浦田さん、あなたをこんなにしてしまったのは、俺にも責任があることなのかも知れない。それについて、謝罪しようなんて、偽善のようなことをするつもりもない。俺に出来るのは、あなたを『とめる』ことだけだ」
 そして、栂が拳を向ける。


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