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作品名:「SagaV 神氣学園滅神傳」 作者:ジン 竜珠

第35回 肆之傳 Count down・弐
 浦田は、中城に命じられたから、という理由で調査をしているわけではなかった。あくまでも、自分がうまく立ち回る「武器」を手に入れるためだった。だが。
「まさか、『金丹』だとは……!」
 ミハシラ・メディックスの研究所。その事務室の一つで、浦田は資料と現物に目を通していた。かつて、自分は天宮流神仙道の、師範の元で修行していた。だが、彼自身、納得できない、というより、どうにも承服できないところがあった。自分が当時、抱えていた問題(金銭問題と女性問題が同時に起こったものであったが)に対し、師範は、こう言ってのけたのだ。
「時期が来なければ、解決しない問題もある」
 そんなバカな、と思った。そもそも、そういう不条理をねじふせるための神仙道ではないのか? 口論の末、彼は師に対し、拳を向けた。そして、「禁咒」さえ使った。
 今思えば、逆上して冷静な判断が出来なかったのだろう。師には、あっさりと解咒されたが、そこから逃げる途中で、弟(おとうと)弟(で)子(し)と一戦交えることになり、彼に傷を負わせた。結果として浦田は破門された。
 それから彼は方向転換した。絶対に成り上がってやろう、と。幸い、師の元で修行していた時の知り合いに、「ミハシラ」の関係者がおり、そこを「ツテ」にして呪術を使い、次期社長の座を狙う護(ご)代(だい)真(しん)吾(ご)と知り合った。護代もその時は既に天宮流に弟子入りしていたが、それはあくまで形式的なものに過ぎず、道士としての実力を見れば、明らかに浦田の方が上であった。そこでやはり呪術を行使し、護代に自分が腹心として役に立つと思わせ(もっとも完全に成功したとは、言い難かったが)、ここまで来た。
 そして、今日。
 遂に、とんでもないことを突き止めたのだ。
 どういう経緯があるのか、それは、はっきりいってわからない。だが、ミハシラが何者かを通じて手に入れた「金丹」という、翡翠のような色をしたコイン大の物体、それを模したというコーヒー色の物体。今の彼でもわかる。この物体には、明らかに人智を超えた「何か」がある、と。
 これを使えば、成り上がるどころではない。師範でさえ到達できていないであろう境地、神仙になることも不可能ではない。
 もちろん、彼とて、はじめから信じていたわけではない。だが、実際に現物を手にすると、妙な高揚感が全身を駆け巡っていくのを感じる。今では、これを服用すれば、神仙の境地に至ることも夢ではない、と喩えではなく思える。
「これさえ、これさえ、あれば……!」
 声が震えているのがわかる。自分は、今まさに古今東西の道士が夢見た、夢の仙薬を手にしているのだ。
 そして、しばし眺めた後、浦田は六角形の薬剤を飲み込んだ。

 浦田の意識は、そこで途切れた。

 ミハシラには、天宮流神仙道の関係者が幾人か、入り込んでいる。菅(すが)井(い)忍(しのぶ)もその一人だ。彼は「ミハシラ・メディックス」の「臨床第二部」という部署に、研究員として勤めていた。一つには、ミハシラが、何か、妙な研究に手を染めて、人間社会に仇(あだ)なすことがないよう監視するため、もう一つは、もしそのような事態になった時は、それが惨事を引き起こさぬように収拾をつけるためであった。
 かつては大病院で十数年、薬剤師として勤めていた「縁」と呪術を使い、彼はミハシラ・メディックスに「ヘッドハント」という形で入った。そして、この数年は、何か秘密の研究を行っているらしいところまでは突き止めてはいたのだが。
「これは一体!?」
 異様な気配を感じ、事務室まで行って驚いた。そこにいたのは、頭部は虎、胴体は狒(ひ)々(ひ)、脚は馬、さらにはサソリの尾を持つ、身長三メートルほどの怪物だったのだ。


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