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作品名:「SagaV 神氣学園滅神傳」 作者:ジン 竜珠

第25回 参之傳 父、来たる・参
「江戸時代の終わり頃に『天宮純凱』っていう宗師がいた。その宗師は、いろいろと研究を重ねて『金丹』を醸(じよう)成(せい)することが可能だっていう結論に至った。その醸成の場が、今、新輝學園が立っているあたりだ」
 そういえば、イザナミとの戦いのあと、冥神の五(い)十(そ)村(むら)蛍(けい)矢(や)さんが、そんな話をしてた様な気もするな。
「あのあたりは、大昔、火山帯だったそうなんだ。噴火で山体が噴き飛んで、今のような地形になったらしいんだが、その際、地下に虚ろな空間が出来た。早い話が、地下空洞が出来たわけだ。その空洞に、純凱宗師は金丹を醸成する『炉』を作った」
 服用するだけで人間を仙人に変えるという金丹の材料は、正直、人間が服用するのには問題のあるものばかりだ。だが、それを何かの「象徴」「言い換え」と解釈することで、クリアしようとしたことはあったらしい。実際、そういう形での伝書もあるし、俺も目を通したことがある。中には、「丹」と名はついていても、実際にはいくつかの呪符の組み合わせ、っていうのもあるし、それらにある程度までの効果があるのも、俺自身の体験として持っている。
「だが、それは失敗してしまった。その理由は、書き残されてないから、よくわからない。問題なのは、その先だ」
 と、親父はいったん、間を置く。話を惜しんでいるわけではなく、自分の中でもまだ消化できていない、そんな風に見えた。
「純凱宗師と一部の弟子たちは、その際、『死の女神』を呼び起こしてしまった。死の女神、黄(よ)泉(も)津(つ)大神(おおかみ)、つまり、伊弉冉尊(イザナミノミコト)の暗黒面だ」
「な……ッ!?」
 俺がこれまで教えられてきたことと、今の話が、全く重ならない。確かに、一般のお弟子さんたちには「秘伝」ということもあって、教えられないことや敢えて「正しくない」伝を授けることもある。一般には火の神を生んだことが原因で、身(み)罷(まか)った伊弉冉尊だって、天宮流の伝では「人間界を伊弉諾尊(イザナギノミコト)、黄泉国(よみのくに)を伊弉冉尊が統治なさる為に『神(かむ)去(さ)り』の儀が行われた」ことになっている。
「混乱してるかも知れんが、話を続けるぞ?」
 そう言って、親父は一つ、息を吐く。
「これが、どこまで真実なのか、正直なところ、俺にもわからない。いくらなんでも黄泉津大神そのものが、あの土地に封じられているとは思えない。だが、それに準ずるモノ、繋がるモノが封じられているのは、確かだ。……俺は、この目で確かめたからな」
 そして親父は俺を見る。
「お前のことだ、おおよそのところは感じていると思う。金丹は『陽の氣』の極みだ。それに引き寄せられるのは、それに見合うだけの『陰の氣』。当然ながら、両者は相(そう)殺(さい)し、バランスを取ろうとする。だから、あの土地では『陽』と『陰』が絶妙なバランスの上で成り立っている」
 この言葉で、俺はあそこの力場が妙に調律されている理由が、わかったような気がした。
「その『炉』は、俺の目には黄金の御(み)柱(はしら)に見えた。そして『陽の氣』に引き寄せられて、『陰の氣』が渦を巻いているのもな」
 そういえば以前、あそこから「氣」を引き出して妖魔を召喚する輩がいるって話を、聞いたことがある。すべての根源は、江戸時代にまで遡っているわけか。
「それから」
 と、親父は俺が思考をまとめるのを見計らうように、続けた。
「珠璃ちゃんが眼鏡をかけている理由なんだが」
 なんで、ここで珠璃の名前が出てくるのか、わからないが、俺のそんな困惑は気にかけないかのように、親父は言った。
「視力以外にも、他に理由があるのは、お前もおおよそは聞いていると思う」
「ああ。確か」
 と、俺は記憶の底をさらってみた。


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