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作品名:「SagaV 神氣学園滅神傳」 作者:ジン 竜珠

第23回 参之傳 父、来たる・壱
 九月の連休に、近くに来るから、ということで前もって電話があったのが、この間の火曜日。「極秘」だとかいうことで、胡桃姉さんだけには話した。
 え? 何のことかって?
 来るんだよ、親父が。
 親父は、今、天宮流の修行の一つ「『白(つくも)』修(しゆ)祓(ばつ)」という魔物討伐で、世界中を回っている。これは、平たくいうと、宗師がその都度「場所」と「討伐する妖魔」を伝え、その指示に従って、その場所で妖魔を討伐するのだ。倒す魔物は全部で九十九匹。これだけの危険な修行を、親父はたった一人でこなさないとならない。もっとも、通訳さんはその土地その土地で手配できるそうだし、雨(あめ)風(かぜ)しのぐところや食事なんかは、現地でどうにかなるという。ただ、あくまで他人のサポートが入るのは日常生活の部分で、魔物討伐は親父一人でやらねばならない。
 それが「宗家を継ぐ」ということなのだそうだ。
 ちなみに倒す魔物の数が「九十九」と半端なのは、最後の一匹、つまり『百』匹目は、おのずと眼前に現れるからなのだそうだ。
 んで、その修行の関係で日本を横切るとかで、ついでに俺の顔を見ていこうということらしい。
 特にウチに逗留するということではないそうなので、準備とかは必要ないが、それでもバタバタとしたりして、あっという間に約束の期日になった。
 姉貴は、勤め先が取り組んでいるゲームソフトの、勤め先が担当する部分の納品やら、諸々のプレゼンとかがあるので、どうしても休めないらしい。なので、俺一人が応対することになったが、親父も電話では「俺とサシで話がしたい」みたいなことを言っていたから、特に問題はないだろう。
 朝の十一時、親父から電話がかかってきた。
『よう、竜輝、久しぶりだなあ』
「親父も、声だけ聞くと元気そうじゃん」
『まあな。これでも、何度か死にそうになったがな。なんとか神のご加護をいただけてるよ』
「今、どこ?」
『市電の、「宝條西」って駅だ。ところで、このあたりに、飯食えるとこないか?』
「その駅だったら」
 と、俺は記憶をさらう。だが、たいして時間は必要なかった。
「『菜(さい)彩(さい)古(こ)潭(たん)』っていう、ヴィーガンの店があるんだ。俺と姉貴、珠璃や杏さんたちも、ちょいちょい利用してる」
『そうか、なら、安心だな』
 天宮流神仙道を奉ずる者は、基本的には菜食主義だ。「基本的に」って断ったのは、もちろん、魚や卵、乳製品を食べることもあるからだ。「食べる」っていう行為は、根本的に「何かの命をいただく」という行為だ。だが、それが動物の場合、相手にとっては、いうまでもないことだが「命を奪われる」ということでもある。当然ながら、それは「怨念」という形で食べた者の霊的因果として蓄積されていく。
 そのレベルとしては、まさに微々たるものだが、これがある程度の期間を経ていくと、結構、馬鹿にならない。なので、俺たちは定期的に「自修祓」を行って、その「業(ごう)」の解消につとめている。
 それなら、植物だって「命を奪われる」ことに変わりないじゃないか、という向きも確かにある。だが、植物と動物とでは、根本的に異なるところがある。
 それは、植物の場合、「食われること」で種子なり花粉なりを遠くに運んでもらう、つまり子孫を増やしていくという前提があるからだ。そのため、天宮流の解釈としては「菜食をする時は、一(いち)粒(りゆう)万(まん)倍(ばい)を心がけよ」となっている。
 詭弁っていわれれば、まあ、そういうところがないとはいえないんだけどな。
 とりあえず、約束の場所までは、ウチからだと三十分ぐらいはかかるからな、親父には近くにある本屋ででも時間を潰してもらうように言って、俺は出かけることにした。


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