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作品名:「SagaV 神氣学園滅神傳」 作者:ジン 竜珠

第16回 弐之傳 欲望という名の媚薬・弐
 即決即断といってもいいスピードだった。
 実際には護代真吾からミハシラ・メディックス専務の話を持ちかけられてから一週間程度はかかっていたと思うが、身辺整理などいろいろやらねばならないことをやっていながらだから、これは驚異的な速さといえるだろう。
 もちろん、専務からはあれこれと慰留された。だが、現社長を後ろ盾にしている護代と、ことを構えるのは得策ではない。そのぐらいの判断は誰にでもできるだろう。
 かくして中城はミハシラ・メディックスの専務の椅子を手に入れた。
 そして、その初日の夜のこと。
「君が、護代理事長の狗(いぬ)、いや、失礼、理事長がここに送り込んでいたスパイだね?」
 中城の前には一人の筋骨たくましい男がいる。名前は浦(うら)田(た)将(しよう)兵(へい)。目つきの鋭い、いかにも油断のなさそうな男だ。
 浦田は無表情に頷いた。
「君に聞きたいことがある。ここではどうやら秘密の薬剤が研究されているようだが、君はその詳細を知っているかね?」
「いえ」
 と、浦田は首を横に振ってから言った。
「ですが、調べろということでしたら、理事長には内密でお調べ致しますが?」
「ふむ。……理事長の話だと、脳に関連するクスリのようだが」
 と、中城は考える。まさか向精神薬の類とは思えないが、研究段階でそのような作用を持ってしまうことは、想像できなくもない。場合によっては護代に対する「武器」になるかもしれない。それに浦田も「理事長には内密で」と言ったところから見て、それなりに野心を持った男なのだろう。
 その野心が中城をも喰い潰すようなものであってはならないが、そのあたりを見極める自信が、中城にはある。
 だが、と中城は考える。そもそも脳に作用を及ぼす薬剤の話を持ちかけてきたのは、他ならぬ護代だ。とすると、それに対して調査するであろうことは、護代も見越しているのではないか。正直、護代が何を考えているか、わからない。知られても構わない程度のものなのか、それとも何らかの「秘密」を共有させようと思っているのか……。
 護代の真意が奈(な)辺(へん)にあるのか、わからないが、できることはやっておいて損はあるまい。
「わかった。浦田君、君に調査をお願いしよう」
「かしこまりました」
 と、浦田は一礼して専務室を退室した。
 これが吉と出るか凶と出るか、ある種のギャンブルだが、それをうまく武器にできるだけの自信が、中城にはあったのだ。

 浦田も、ギャンブルに似た高揚感を覚えていた。この情報が、場合によっては護代に対する「武器」になるかも知れない。
「鬼が出るか、蛇が出るか」
 これまでの感触から、この薬剤がおそらく市井に出回ることはないであろう事は、感じている。さらに志賀の話から推定して、どうやら神仙道に関係した物のようだ。
 うまく立ち回れば、今度来たという新専務に対しての駆け引きにも使えるかも知れない。
 様々な計算をしながら、浦田は自分にあてがわれたマンションへと向かった。


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