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作品名:「SagaV 神氣学園滅神傳」 作者:ジン 竜珠

第13回 壱之傳 帰郷雑記・漆
「それにしても。ロクなこと考えねえな、あの爺さんは」
 一歩間違ったら、怪我じゃすまなかったぞ。
「……あれ?」
 ふと大蛇の消えた辺りに目をやった俺は、あるものが転がっているのに気がついた。
 それを見た珠璃が呟いた。
「七支刀(しちしとう)……」
「ああ」
 変な氣は感じなかったので、俺は手に取ってみた。長さは一メートルちょっとあるだろうか。柄は滑り止めらしき麻紐が巻いてあり雑だが、刀身はまるで研いだばかりのように光を反射している。
「『御刀(みはかし)の前(さき)もちて刺し割(さ)きて見たまへば、都牟羽(つむは)の大刀あり』ってところか。クサナギの剣(つるぎ)かな、これ?」
 言いながら珠璃が大刀を覗き込む。確かに八岐大蛇からクサナギの剣が出たって話にはなってるがなあ。
「ま、爺さん、じゃねえや、宗師に聞きゃあ、なにかわかるだろう」
 妖気も、ましてや神氣も感じない七支刀を手に、俺たちは屋敷へ戻ることにした。

 刀を手にした宗師は「うむ」と唸ってから、何か考えていたようだったが、不意に笑顔になるとこう言った。
「これはある好事家(こうずか)が作らせたものでな。たいそう大事にしておったらしいが、何かの拍子に怨念を吸い込んだらしい。蛇の霊が取り憑き、七つの切っ先がそれを真似て八頭の大蛇霊になったらしいのじゃ。それを儂の弟子が鎮め封じておいたのじゃが。かくも見事に妖気が消え失せておるわ。腕を上げたのう、竜輝」
 ほめられると悪い気はしない。
「よし。これはお前にやろう。なあに、もとの持ち主からはすでに『いらぬ』と言われておるし、戦利品と思えばよかろう」
「やろうって……。大丈夫か、これ? 刀剣不法所持とかに引っかかったりしねえか?」
「ただの飾り物じゃ」
「飾り物って、結構鋭いぜ、切っ先とか」
「じゃが何にも切れぬ、ナマクラじゃ」
 俺と宗師が、そんな問答をしていると、横から珠璃が言った。
「いいじゃないか。せっかくだから、戴いておけば」
「何が『せっかくだから』なのか、よくわかんねえが……。ま、くれるっていうんなら」
 正直、こんな使い物にならない飾り物の剣より、霊剣の方がいいが、やっぱ刀剣不法所持は、まずい。
 そんなわけで、なんだかよくわかんねえ、土産ができちまった。

 巳の道場から出て行く竜輝と珠璃を見送る瑞海(ずいかい)の傍に、一人の壮年の男が近づいてきた。
「坊ちゃまにお譲りになったのですね」
「佐久田か。ああ、儂が持っておっても意味をなさぬでな」
「やはり、『来るべき時』が来た、ということでしょうか?」
「うむ。儂は、そう睨んでおる。あの大蛇霊が、『本性』である剣に戻ったところからみて間違いあるまい、遂に『来てしまった』、とな」
 佐久田も竜輝たちが去って行った方を見た。
「わたくしどもも、できうる限り尽力致します」
「すまぬな」
「お気になさいますな」
 と、佐久田は笑顔になる。
「人の世のためのこと。力を尽くすのは当然のことでございます」
 深く深く頷く、瑞海であった。
 まるで自分自身に言い聞かせるように。


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