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作品名:「SagaV 神氣学園滅神傳」 作者:ジン 竜珠

第12回 壱之傳 帰郷雑記・陸
 もちろん、本物の八岐大蛇ではない。気配から察するに、大蛇霊(おろちれい)の集合体といったところだろう。だが、それでもこいつを祓うのは、ちょっとやそっとじゃいかない。イザナミほどじゃないが、それに準じるぐらいの「氣」は感じる。
 こっちを向いた八つの口が、いきなり青黒い炎を吐いた。呪的炎だから物理的な火災は起きないが、まともに食らったらただじゃすまない。
「いきなりフルバーストかよっ!?」
 身を捻り、すんでのところでかわすと、俺は様子見の気弾を放った。大蛇に当たった気弾は「パチ」とか「ペチ」とか、なんとも情けない音とともに弾ける。直後、尻尾の一本が俺を殴り飛ばそうと襲ってきた。それを気合いとともに蹴り返すと、脚に電気にも似た痺れが残った。
「こいつは……」
 俺は珠璃に目配せをした。直(じか)に叩くな、と。どうやらコイツの表面は瘴気(しょうき)で覆われているようだ。それを察した珠璃が間合いを取り、木の上にジャンプする。俺も高枝の一本に跳び乗る。
 珠璃が印を組み、呪文を唱え始めた。
「神火清明、神水清明、神風(しんぷう)清明。風の大神(おおかみ)の御舎(みあらか)にかけまくもかしこき天水分神(あめのみくまりのかみ)国水分神(くにのみくまりのかみ)の御魂(みたま)を招(お)ぎ奉りて……」
 これは呪的な風を起こす祝詞だ。果たして唱え終わると同時に、風が巻き起こり大蛇を中心にして竜巻となる。その風が、大蛇の瘴気を削り取っていく。
 だが、大蛇もじっとしているわけではない。口から炎を吐いては、俺たちを牽制する。竜巻すら貫き通す炎は、瘴気こそないが、おそらく精神的に堪えるほどには呪詛を抱え込んだ炎。おかげで、なかなか近づけない。やがて、風が収まる。だが。
「思った以上に厄介だな……」
 大蛇から感じられる瘴気は、それほど衰えていない。
「竜輝、こいつは皮を斬らせて肉を斬るぐらいでないと、勝てないかも」
 珠璃の言葉に「そうだな」と答えると、枝から飛び降り、尻尾の一撃をかわしながら木の陰に隠れる。
「あるいは、肉を斬らせて骨を断つ、か」
 俺は四肢に呪氣をこめた。
「我が行く先に、錦まだらの蛇おらば、空飛ぶ比売(ひめ)に、いうて捕らせん」
 蛇除けの呪歌を唱え、俺は一気にダッシュをかけ大蛇の懐に入る。そして右の拳を一つの首、その付け根に撃ち込んだ。直後、妙な熱さと痺れが全身を駆け巡る。吐きそうになるのを堪えながら、俺は一旦間合いを取る。そして俺が拳を撃ち込んだ、その場所に正確に珠璃が氣で作った槍を投げつけた。
 人間のような気味の悪い悲鳴を上げ、大蛇がのたうつ。突き刺さったその槍目がけて、俺は氣で練り上げた紐を投げつけ、巻き付けた。そして神歌を唱える。
「八塩(やしお)折りの 酒、醸(か)み成(な)して 垣作り 八門(やかど)を作りて 酒船(さかふね)を置く!」
 神歌の持つ咒力が氣の紐を通じて大蛇の体内を駆け巡る。苦しみのたうち回る大蛇目がけて、珠璃が樹上から三角跳びの要領で、跳び蹴りを食らわせた。一瞬、珠璃の表情が苦悶に歪んだから、俺と同じように瘴気にあてられたのだろう。
 珠璃の跳び蹴りを喰らい、地響きとともに仰向けに倒れた大蛇の腹に飛び乗り、瘴気を堪えながら俺は再び神歌を唱えた。
「八雲立つ 出雲八重垣 妻籠み(つまごみ)に 八重垣作る その八重垣を!」
 天に突き上げた俺の手刀の周囲を、白光(びゃっこう)の霊気が渦を巻く。その霊気をまとわりつかせたまま、俺は大蛇の腹に手刀を突き込んだ!
 女のような甲高い悲鳴を上げ、大蛇が痙攣する。大蛇から飛び降りるのと、大蛇が光の粒子となって消え去るのは、ほぼ同時だった。
「ご苦労さん、竜輝」
 肩で息をしながら珠璃がねぎらいの言葉を寄越す。
「そっちも、ご苦労さん」
 お互いの無事を確認するかのように、俺たちはサムズアップした。


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