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作品名:「SagaV 神氣学園滅神傳」 作者:ジン 竜珠

第10回 壱之傳 帰郷雑記・肆
 天宮の実家がある敷地は、とにかくでかい。屋敷の裏手にでかい森があるなんて、普通じゃ考えられないだろう。この森は某ドーム球場が優に数十個入るそうで、聞いただけだが、山も一つ二つ持ってるって話だ。一体、それだけの資金、どこから……。
 そりゃあ、秘伝の中に「天津御宝(あまつみたから)の招魂祝詞」っていうのがあるそうだけど。……そんなに効果あるのか、その祝詞? ……あるから秘伝扱いなんだろうなあ。
 ま、それはともかく。俺は珠璃とともに森の中を進む。十分ほど行ったところで、珠璃が道ならざるところに足を踏み入れた。そして。
「これなんだけど」
 と、珠璃が草をかき分ける。確かに、そこに「それ」はあった。ただし物理的実体を持ったものではない。だから、霊的知覚力を持たない人には、感じ取ることさえできないだろう。
「確かに、なんかの法陣の一部っぽいな」
 俺や珠璃が見ているのは、赤く淡い光で描かれた呪字や丸や線だった。呪符の一部にしては大きいから、おそらく何かの法陣の一部だと、珠璃は推測したんだろう。
「ボクの勘だけど、何らかの陣を組み上げる最中で、意図的に分解したんじゃないかな? 破壊されたなら、こんな形で残らないだろうし」
「そうだな。いつでも法陣を組み上げられるように、パーツに分解してここに隠してあるのかも知れない。とすると」
「ここ以外にも、同じようなものが転がっているかも知れないね」
 頷いた俺は、目の前の呪字を見る。そして線や丸の位置関係から、おおよその解答を出した。
「あくまで俺の記憶と照らし合わせた結果だけどな。『送魂(そうこん)の陣』の一部に似ている気がする」
「送魂って、脱魂(だっこん)や千里眼(せんりがん)を補助するっていう、あれかい?」
 脱魂は、今風に言うと幽体離脱、千里眼はリモートヴューイングいわゆる遠隔透視のことだ。
「ある程度、腕のある人、ってことかな?」
 と、珠璃が俺を見る。確かにこの送魂の陣は、いわゆる初心者では授けてはもらえない。詳細は煩雑になるから簡単な説明にするが、この陣は自力で脱魂や千里眼のできない人がその補助のために使うものだ。といってもある程度、修行して、基礎的な能力が身についていないと使いこなせない。だから、余程の才能があれば別だが、普通は入門してすぐに教えてもらえるようなものじゃないのだ。
「『誰』が、『なぜ』、『こんなところに』、っていうのも気になるけど、『なぜ』、『バラして』、『隠してあるのか』って方が気になるな」
 確かに、こんなものが転がっているのに気付けば、爺さんが放っておくはずはないだろう。さっさと処分するなり何なりしているはずだ。うんうん唸りながら、俺は周囲を探る。見える限り木ばかりだ。この陣をここに置くふさわしい理由を、なかなか思いつけない。
「唯一考えられる理由は」と、俺は言った。
「修練の際、いちいち初めから陣を組むのが面倒だから、ってことだな。体裁を考えて、ここら辺りに隠してあるってところか。こんな無精は、修行者としては失格だからな。宗師に知れたら大目玉だ」
 宗師曰く、「陣を描き、解呪するまでが修行」なのだそうだ。なんか、「家に帰るまでが遠足」みてえだが、確かにその通りだ。陣の構造を理解しながら『描く』ことも、念の力の増強に役立つからな。
「待てよ、確か『隠された法陣を見つける咒』っていうのがあったな」
 ふと、そんなことを思い出し、俺は呟いた。
「なんだい、それ?」
「ほら、俺たちみたいのは、どこで術比べだの腕試しだのに出くわすか、わかんねえだろ? そんな時、相手が仕掛けた『罠』だとか見破る必要があるからな」
 これを使えば、特定の陣のパーツが、どこにあるか、探査できるだろう。ただ。
「そこまでやる必要があるかどうか、だなあ……」
 チラと珠璃を見たが、珠璃も特別重要視しているようではない。ま、いいか、念のためってわけでもないが、知ったからって、問題になるわけじゃないし。
 俺は、目の前の陣に意識を集中させた。
「アハリヤ、アソバストマウサヌ……」
 そして静かに「咒」を唱える。やがて唱え終わると同時に、あちこちから赤い光が立ち上る。
「結構、散らばってるなあ。一応、マーカーつけとくか」
 俺は小さく咒を唱え、浮かび上がった陣の欠片(かけら)に念で「楔(くさび)」を打ち込む。一瞬ですべての欠片に打ち終えると、俺は咒を解除した。これで、誰がこの陣を作って、分解してバラ撒いたか、わかるけど、まあ、知っても意味はないな。


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