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作品名:「SagaU 神氣学園閑居傳」 作者:ジン 竜珠

第9回 壱之傳 最大さいきょーの決戦ッ!・玖
『でもさ、竜輝。ここでバックのポテトを食べたところで、勝負がどうにかなるの?』
 途中にある宝條の「爆ドナルド」通称バックでポテトをつまんでいると、美悠那からメールが来た。美悠那はポテトを、はくはくと食っている。一応左手にスマホを持ってはいるが普通に画面を見ているようにしか見えない。器用なヤツだな。
 俺は杏さんに気取られないように返信した。
『例えば、何か食べてお腹が一杯になったり時間がずれたり、味覚に変化が出たりすると、ノーゲームにせざるを得ないことだって有り得るだろ?』
 さすがに「杏さんの予知とは予定外の行動をとって、結果を変える」なんてことは書けないからな、万が一美悠那に何か聞かれたら答えようと、考えていたことを書き込んだ。
 しばらくして美悠那から返信。
『ウス! りょーかいッス! でも、「スイーツキング」のことも忘れないでね』
 美悠那にとっては至上命題だからな。

 バックを出て俺たちが行った先は、予定通り「ヴィヴァーチェ」。メレンダ・タイムのチョコムースケーキはちょっと変わっているという。どう変わっているかというと。
「……チョコクリームの塊そのものか?」
 そんな風に思ってしまうほど滑らかで、スポンジケーキが無いんじゃないかって気さえしてくる。
 だが、それだけなら、ちょっと上等なケーキショップなら、出てくることもあるだろう。ここのケーキが特別たる所以、それは。
「かすかに香るのは、フルーツの香り……」
 そう、複雑にブレンドしたフルーツジュースが混ぜ込んであるのだ。
 チョコとフルーツの味と香りが、喧嘩することなく融和し、なおかつそれぞれの持ち味を主張する。そればかりではない。レモンティーを口に含むことで、甘さが緩和され、代わりにチョコの風味が鼻を抜け、フルーツの香味が口の中を満たす。個数限定だそうだが、なるほどと頷ける。
「……ハッ!? しまったッ!」
「どうした、竜輝?」
 思わず声を上げた俺に、零司さんが怪訝な顔をする。
「あ、いや、何でもないッス」
 嘘。何でもある。ていうか、今みたいな感想コメントを、さっきのリポート勝負でやってたら、勝てはしないまでも、イイ線いったんじゃないだろうか。
 何やってんだ、俺は?
 ま、それはおいといて、ここでの勝負だ。ズバリ「ブレンドしたフルーツ当て」だ。配合比率なんかは秘伝だから、さすがに店の人は教えてはくれないだろうし、厳密な種類とか数も、それに準じるだろうから、杏さんとパティシエさんとの協議の結果、三つ当たればいいらしい。
「ということは、三つ以上ブレンドしてあるんだな……」
 俺は、口に含んだケーキを、ゆっくりと転がす。気をつけないと、ムースだからすぐに溶けちまうからな。
 オレンジはすぐにわかるんだがな。あとは、パイナップルか。この、ちょっと酸っぱい感じはレモンかなあ。でも、レモンティーと比べると、違うようでもあるんだよなあ。……あ、グレープフルーツかな?
 俺は味覚に神経を集中して考えた。こういうのは鎮魂や構成素材を突き止める儀式(ただし、場所が場所だけに簡易法な)でもすればすぐにわかるんだが、さすがに公明正大な勝負だとすると、そういうのは御法度だろう。だから、俺は五官のみに頼って味の分析をした。
「……よし!」
 俺は、解答を紙に書き、杏さんに渡した。
 同時に、美悠那も杏さんに紙を渡した。
 ここでの勝負は、ちょっと俺にアドバンテージがある。美悠那と全く同じだったら、一日の長があるということで彼女にはペナルティがあるのだ。詰まるところ、俺の勝ちだ。
 そして結果は。
「これは、同点ですけど、ルールに則って、竜輝はんの勝ちどすなあ」
 杏さんの言葉に思わず俺は右の拳をガシッと握った。
 よし、これで星一つ、先行だ。


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