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作品名:「SagaU 神氣学園閑居傳」 作者:ジン 竜珠

第5回 壱之傳 最大さいきょーの決戦ッ!・伍
「……と、まあ、こういう感じでいきますさかい。まずは練習いうことで」
 杏さんはにっこりとする。
「……は?」
 眉をひそめた俺に、ほっと胸をなで下ろす美悠那。
「今日回るお店の数は偶数。同点になるいう可能性もあります。せやさかい、まずは要領を掴んで戴いて、次から本番どす」
 なんなんだ、この人は? いや、まあ、言うことがわかんないわけじゃないが、なんか、損した気分だ。
「ということは次からも『ガレット・デ・ロワ』方式ですか?」
 美悠那はモンブランを頬張りながら聞いた。ノーカウントということで安心しきって食べてるな。
「そういうところもあります」
 杏さんは、しれっと言ってのける。つまり、そうじゃないところもあるってことだ。
 ……ていうかさ、美悠那もありすも気づけや。どう考えても変だろ、「なんで、杏さんが今日のことを詳しく知っていて、しかも手配済みなんですか?」って。
 零司さんたちは、当然事情を知ってるから、何とも思ってないだろうが、俺たちの「実情」を知らない美悠那たちには、「ちょっとした」どころか、えれェミステリーだぞ、これ。
 誰も言わないなら、俺が言ってやろうか。なんて思ったが、ちょっと不自然ではあるな。
 ……いや、不自然じゃないか。考えすぎたな。
「えっとー、ちょっといいッスか、杏さん?」
 俺の言葉に、小首を傾げ杏さんが俺を見る。この仕種に、ハートをブチ抜かれる野郎どもの、なんと多いことか。そして杏さんに振り回され、身も心もボロボロにされた野郎どもの屍の、なんと多いことか。
「今日の事って、そもそも『スイーツ研』のイベントッスよね? なんで部外者の杏さんが仕切ってるンスか?」
 俺の言葉に杏さんが、かすかに目を見開いた。
 ……よし! 少しだが、杏さんの予知からズレてきたみたいだぞ。これなら、なんとか今日のことを変更できるかも知れない。勝率、60パーセントに上がったぜ。
 出し抜けに言った俺の言葉に、杏さんが珠璃を見る。そして。
「なんや、珠璃はん、詳し事、竜輝はんに伝えてへんのどすか?」
「すみません、なんか言い出すタイミング、外しちゃって」
 なんだ? なんか雲行きが変な方向に行きやがったぞ?
 一つ咳払いをして、杏さんは言った。
「生徒会役員が参加できひんいうのんを珠璃はんから聞きましてな、それで、美悠那はんにも相談してウチら、つまり飛び入り参加組どすな、ウチらはサプライズな企画を入れても構へんか、了承を戴きましたのや。もちろん、プランナーである、ウチは外しましたけどな」
 美悠那を見ると、フォークを咥えたまま、まるで「あたしは無実よ」ってのを確信してるかのような表情で頷いた。
 なんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんじゃ、そりゃああああああああああああああああああああああああ!!!!!!。
 見ると、おぼろげにも零司さんたちは知っていたような様子。それでも鷹尋は、あまり詳しいことは聞かされてなかったようだが(なんせ連絡したのが麻雅祢だからな)、話の中で「杏さんが言ってた」みたいなキーワードがあったとかで、充分な用心やら心構えやらで臨んできたらしい。
 どうやら何も知らずに、のこのこやって来たのは、俺だけのようだ。
 ていうか、もしかしたら俺と美悠那の一騎打ちっていうのも、杏さんには織り込み済みのことなのかも知れない。
 こりゃあ、予想外に手こずりそうだな、杏さんの予定調和を打ち破るのは。


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