小説&まんが投稿
 ようこそゲストさん トップページへ ご利用方法 Q&A 操作マニュアル パスワードを忘れた
 ■ 目次へ

作品名:「SagaU 神氣学園閑居傳」 作者:ジン 竜珠

第42回 陸之傳 熱きたたかい・肆
 実体化していないということは、つまり、「因子」となって辺りに偏在しているということだ。言い換えれば、そこら中に散らばっているわけで、どこか一点に特定などできない。
 そこで、俺は「咒」を打ち込んだわけだ、因子を含んだ海の中に。
 案の定、奇妙な「手応え」があった。……が。
 因子が集まり、まるでウミヘビのように水の中をくねっていくのを感じる。本能か、はたまた珠璃が操作したのか、因子は俺から逃れるように沖の方へと流れていく。
「逃がすかッ!」
 俺は再び海に向かって拳を打ち込む。水の中を通して「咒氣」を送り込んだのだ。だが、
「させないよッ!」
 と、珠璃がそれを相殺するような「氣」を水の中に打ち込んだ。
 俺の放った「咒氣」は珠璃によって消滅させられた。となれば。
 俺は沖へと泳ぐ。近くで直接、叩くのだ。俺の意図を察したらしい、珠璃が俺の後を追いかけてくるのがわかる。
 と、不意に珠璃の気配が消えた。振り返ると、珠璃の姿が見えない。隠形(おんぎょう)の氣が感じられるから、どうやら、溺れたのでないことはわかるが、何をするつもりなのか。
「随分と沖に来ちまったな」
 気がつくと、随分と沖に来ていた。浜辺の人だかりが小さく見える。
「さて、と」
 例の水妖の気配がすぐ傍に感じられる。俺は「そこ」目がけて一気に氣を発した。その瞬間。
「待ってたよ、この瞬間(とき)を!」
 穏形の氣を解除し、珠璃が水上に姿を現す。そして自身も水妖目がけて何らかの「氣」を打ち込んだ。直後、水妖は高波となり、浜辺へと突進する。
「! なるほど、俺の放ったエネルギーを斥力に変えて、一気に浜辺へと送ったのか!」
「さすが竜輝だね、一瞬でそこまで見抜くなんて。まあ、もっとも気付いたところで、あの高波のスピードにはついていけないだろうけど」
 と、立ち泳ぎをしながら胸を反らす珠璃。
「……なあ、いいか?」
「なんだい、降参かい?」
「このままだと、お前も拝めないんじゃねえか、いろいろ?」
「……」
 自分が何をしたのか、一瞬で悟った珠璃が、浜辺に向かって猛スピードで泳ぎだした。
 ……そんなに見たいか、同性のハダカ……。
 なんて落ち着いてる場合じゃねえや、あの波、なんとかしねえと。しかし、どうやら因子そのものが波に姿を変えているらしく、しかも変な「力場」に覆われている。多分、さっき珠璃が送り込んだヤツだ。つまり、ここから「咒氣」を放っても、余計に波のスピードを上げるだけで、消滅させることはできない。
 やはり、直接、叩くしかないだろう。俺も浜辺に向かって猛チャージをかけた。

 熱いデッドヒートを繰り広げる俺と珠璃。しかし、(おそらく)何も考えず泳ぎだした珠璃とは違い、俺はある種の「咒氣」で底上げしている。みるみるうちに、珠璃を引き離した。
「あー、もーぅ!」
 と、珠璃が悔しがるのを背後で聞きながら、俺は追いついた波目がけて「咒」を打ち込む。今度こそ、クリティカルだ。断末魔のような唸りを上げ、波が爆裂したかのように、弾ける。
「よっし、解決!」
 気がつくと、随分浜辺近くに来ていたらしい。人々のはしゃぐ声がする。どうやら俺の「咒」の影響を受けた水妖が、消滅する寸前、人々にはさらなる高波になって躍りかかったように見えたらしい。そして。
「もー。何、今の波!?」
 楽しそうな美悠那の声。その方を見ると。
「わぁお。みゅうちゃん先輩、セクスィーダイナマイツです!」
 妙に感動したようなありすの言葉で、自分がどういう状態になっているか、美悠那は己の姿を再確認した。
 時間が凍ること、数秒。金切り声を上げて、美悠那が胸と股間を押さえて海の中にしゃがみ込んだ。
「竜輝、見るなぁぁ! ありすちゃん、水着、あたしの水着探してェェェェ!!」
「いやあ、眼福眼福」
 追いついてきたらしい珠璃が、感慨にふけっていた。その鼻からは紅い液体が、つつつーっと……。
「竜輝、拭いた方がいいよ、その鼻血」
「お前もな、珠璃」
 かくして、バカバカしい戦いは、美悠那一人が迷惑を被るという、どうコメントしてよいやらわからない結果に終わったのだった。


(陸之傳 熱きたたかい・肆・END)


← 前の回  次の回 → ■ 目次

■ 小説&まんが投稿屋 トップページ
アクセス: 71