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作品名:「SagaU 神氣学園閑居傳」 作者:ジン 竜珠

第39回 陸之傳 熱きたたかい・壱
「生徒会優先権」というのものがある。
 ラウンジを生徒に開放する際、夏期休業前に、まず生徒会執行部の面々に使用予定簿を回覧するのだ。これは、体育祭が九月早々に開かれるため、夏休みの後半がその手配やら何やらに費やされる執行部の便宜を図ったものだ。
 で、今日、八月初旬の日曜日。珠璃が夏休み前にラウンジの使用申請を出していた、とかで俺たちは海に来ていた。メンツは俺、珠璃、美悠那、ありす、零司さん、そして優硫だ。麻雅祢と鷹尋は帰郷、杏さんは習い事の一つ「日舞」の発表会だとかで、都合がつかなかったらしい。
 午後一時。快晴の日曜日ということもあって、人でいっぱいだ。
「そういえば、竜輝、覚えてるかい、七十七不思議の一つ」
 と、ビキニの水着姿で珠璃が言った。やっぱりスタイルいいな、こいつ。
「七十七不思議の一つって……。ああ、あれか『遊泳中に水着が消える海』だっけ?」
「あの海って、ここのことだよ」
「……」
 言葉がないとはこのことだ。
「ま、まあ、あくまで都市伝説みたいなものにかわりはないわけだしな」
 俺の言葉に珠璃が意味ありげに笑う。
「……まさか」
「その『まさか』、さ。確かにこの海には『何か』が『いる』。正確に言うと、水着が消えるっていう噂が出て、本当ににそうなったらいいなあ、って思っちゃった男子生徒とか、噂を耳にした世の男どものリビドーが、カタチを為したモノ、いわゆる『思念凝集体(しねんぎょうしゅうたい)』みたいなものだけどね」
 思念凝集体っていうのは、天宮流独特の概念で、ある種の生き霊のことをいう。誰か「念」の強い人が創り出した「種(たね)」に共鳴する「想念」が引き寄せられ、それがある程度の大きさになると、さらに磁石のように同じような想念を引き寄せ、遂には「存在」をもってしまうモノのことをいう。いつぞやの「白骨標本」とはちょっと違う。あれは「核」となるエネルギーやイメージが存在していたが、思念凝集体は引き合うエネルギーが勝手に集まって出来るモノだ。
「ここにいるのは、弱い力場しか持ってないけど、それでもターゲットにした一人の水着を脱がす程度には実体化できるよ」
「そこまで掴んでるんなら、なんとかしとけよ」
「せっかくだからね、眼福に、あずかりたいじゃないか」
 そうだった、こいつはそういうヤツだった。
「それに今日は、いい『生き餌』もあるしね」
 そう言って、珠璃はラウンジ玄関を振り返る。ちょうど、水着に着替えた美悠那が出てくるところだった。こいつも、すげえプロポーションしてやがるな。ビキニは反則だろうっていうぐらいのスタイルっていえば、推測したサイズは言わなくてもわかるだろう。その後から零司さん、ありす、優硫の順に出てきた。
 なるほど、珠璃の意図が読めてきた。
「お前、まさか美悠那に」
「言っておくけどね、竜輝。ある程度、だけど、ここの思念凝集体はボクの支配下にあるよ」
 なるほど。……って、なんだ、コイツ? よくわからねえ。
「何が何だか、本当によくわからんが、お前の企みは、俺が阻止してみせるからな!」
「フン。止められるものなら、止めてみな!」
 不敵に笑う珠璃。
「竜輝、俺を呼んでくれてサンキュウゥゥゥゥだっぜい! 麻雅祢ちゃんがいないのが残念だけど、それを大気圏外に放り出してもあまりある、パァァラダァァァァァァイス!!」
 うれし涙を流しながら、俺の近くでクネクネ踊っている優硫は放っといて、俺と珠璃の間で、変な火花が散っていた。


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