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作品名:「SagaU 神氣学園閑居傳」 作者:ジン 竜珠

第37回 伍之傳 母、来たる・弐
「ちょっと近くに来ることがあってね。それにしても、この辺り、久しぶりに来たけど、随分と変わってるわね」
「だろ? 俺もビックリしたよ。おぼろげな記憶じゃあ、この家は森の中の一軒家って感じだったもんな」
 そんな話をしながらリビングに入ると、全員が起立していた。
「お久しぶりですなあ、おばさま」
 と、杏さんがお辞儀をすると、一同が礼をする。
 ちょっと、俺まで緊張しそうになる。
「あらあら、杏ちゃんも珠璃ちゃんもお久しぶり。響堂くんは立派になったわねえ。麻雅祢ちゃんもかわいくなって、二年ぶりかしら? 鷹尋くんも、あいかわらずかわいいわねえ。舞羅ちゃんも、かっこよくなったわ」
 約二名ほど、その性別には似つかわしくない言葉をかけてから、母さんは椅子に座る。すると、喫茶店のウエイトレスよろしく、珠璃がコーヒーを出した。
「銘柄はブルーマウンテンでよろしかったですか、お母様?」
「あら? よく覚えててくれたわね。ありがと、珠璃ちゃん」
 そして一口。
「あら、おいしい。珠璃ちゃんはさすがよねえ、竜輝のお嫁さんに欲しいぐらいだわ」
「そんな、お母様」
 母さんの言葉に照れる珠璃。
 なに、この三文小芝居? あっけにとられている俺をよそに、母さんは珠璃や杏さんたちと近況なんかを話している。
「みんなの活躍は、おおよそのところは聞いているわ。頑張ってるわね。でも、あんまり危ないことはしないでね。そういう時は周りの大人たちにも頼ること。いいわね?」
 母さんは、遠回しに、冥神に頼るようにって言ってるんだろう。
 しばらくしてコーヒーを飲み終えると、母さんは立ちあがった。
「さて、と。次の場所に行かなきゃ。竜輝、下のバス停まで送ってくれるかしら?」
「? ああ、いいよ」
 すぐそこなのにと思っていると、一同は又、起立して一礼した。

 俺はいつも裏手の坂道を降りたところにあるバス停を使っているが、母さんは幹線道直結の道にあるバス停を利用したらしい。
「竜輝」
「なに、母さん」
 バス停へ向かう道すがら、えらく改まった様子で母さんが言った。
「これから、あなたたち、いえ、あなたの前に大きな試練が立ち塞がると思う。でも、きっと乗り越えてね」
 その時の母さんは、どこか哀しそうだった。
「ああ、大丈夫さ。みんなもいるし、そもそもここの高校の編入試験も楽勝だったんだし、きっと乗り越えてみせる!」
 少し茶化しながら、俺は答える。
 母さんも、それを察したのか笑顔で頷く。

 母さんは宗師の娘だ。父さんとは、今の俺と姉貴のような関係だったという。だからといって俺と姉貴が必ず結婚しなきゃいけないわけじゃない。結婚した例もあるしそうでない例もある。現に宗師である爺ちゃんは、違う人と結婚してるしな。
 だが、例外のない、いや、正しくは「なかった」ことが一つ。それは「竜魂拝受(りゅうこんはいじゅ)」と呼ばれる儀式だ。これだけは性別に関係なく、直系にしか授けられない。俺も六歳の時にこの儀式を受けた。その時のことは、あんまりハッキリ覚えてないが、何かかなり特殊な儀式だったには違いない。
 しかしこの儀式で例外があった。それが俺の両親だ。一度、母さんが授けられた後、しばらくして父さんも儀式を授けられたのだ。これは宗師によると「御神意が降った(くだった)から」とのことで、詳しくは俺も知らない。っていうか、教えてもらってない。まあ、何事にも例外はつきものということだと思って、俺も聞かなかったしな。


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