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作品名:「SagaU 神氣学園閑居傳」 作者:ジン 竜珠

第36回 伍之傳 母、来たる・壱
「金曜の昼頃、そっちに行くから」と母さんから電話のあったのが火曜日。「次の月曜日が納品日だから、金曜は休めない」と姉貴が言ったのが、同じく火曜日。「お母様がお見えになるのなら、お茶とかお菓子の手配が必要だろ?」と、珠璃から電話があったのが水曜日。「ボクたちも、ご挨拶に伺うよ」と珠璃から電話のあったのが木曜日。
 そして今日、金曜。まさに「光陰矢のごとし」だ。掃除だの何だのでバタバタしてたら、二、三日なんてあっという間だな。朝から珠璃、杏さん、零司さん、鷹尋、麻雅祢、そして新輝北女子高、通称北女に通う冨士見 舞羅(ふじみ まいら)も来ている。こいつとは宗家での新年の挨拶の時ぐらいしか会わないから、どういうヤツかわからないが、なんていうか、感情が表に出てこねえのは麻雅祢なみだな。しかもどちらかというと「凛々しい」雰囲気だから、絶えず殺気を放っているように見える。
 何と戦ってるんだ、お前は?
 そんな風に思っちゃうぐらいだ。ちなみに髪は長くて、腰まである。杏さんと同じぐらいかな。美人と言っても差し支えないけど、ナンパしてくるバカはいないだろう。とにかく、まとっている「空気」が尋常じゃないからな。
 あと、凉さんも来たかったらしいけど、冥神の任務で、どうしても来られないっていうのは、昨夜、電話で聞いた。紗弥さんは「ミハシラ・コーポ」の動きが「加速」しているので、やっぱり来られないらしい。これも凉さんから聞いた。
 なんでこんな「天宮の関係者勢揃い」みたいな大ごとになってるかっていうのは、まあ、わざわざ言うほどのことでもないな。俺の母は、天宮流神仙道師範総代である天宮 輝鵬(あまみや きほう)の妻だからだ。……いや、これは正しくないな。父さん、婿養子だから。
 要するに宗師の直系の娘が来るわけだから、こんな大騒ぎになるわけだ。実は近隣の天宮流の関係者からも、どこからどう話が伝わったのかわからないが、こちらに「来たい」という申し出があった。しかし、丁重にお断りした。これ以上、大騒ぎにしたくないしな。なんか、こういう人たちの応対だけで、時間を食った気もするが、まあいいか。
 午前中はみんな揃ってダベってたりしたんだが(その中でも麻雅祢と冨士見は言葉が少なかったが)、約束の時間が近づくと、自然とみんな無口になっていった。自然と静粛な空気というか、そんな雰囲気になっていったのだ。
 みんなも感じてるんだな、母さんが近づいて来てるのに。
 そして、午前十一時十五分。
 インターフォンが鳴る。その瞬間、場の空気が張り詰めた。……やっぱり「宗家の直系だから失礼があってはいけない」ってところか? でも、俺も直系なんだけどな。って、逆に改まられても居心地が悪いだけだ。俺に対しては今までと変わらぬ接し方でいて欲しい。そんなことを思いながら、俺は玄関に行った。
『竜輝、お久しぶり』
 懐かしい声だ。俺はドアを開ける。そこに立っているのは、二十代後半と思しき女性。実際は、もっともっと年齢いってるんだが、そこはそれ、天宮流の修行の成果だ。腰まであるような長い黒髪を、首の辺りで一つ結びにしている。
 これが俺の母さん、天宮 仙満(あまみや ひとみ)だ。
「いらっしゃい、母さん。まあ、上がってよ」
「そうね、あんまり時間はないけど、お茶ぐらい飲んでいこうかしら」
 母さんは、今、白修祓で世界中を回っている父さんの補佐をしている。ちょっと複雑な話になるから、別に「右から左」でもかまわないが、一応、説明しておく。
 父さんがやってるのは主に魔物の討伐のようなものだが、時々、空間の力場や風水でいう「竜穴、竜脈」の調整みたいなこともしている。斃した魔物の仕業、あるいは魔物を斃した影響でそういったエネルギーの「場」に異状を生じることがあるからだ。それが近場ならすぐに調整できるが、遠方に影響が出る時もある。例えばカナダで魔物を斃して、アフリカで影響が出た時、すぐに行って修正、なんて芸当はできない。そんな時、父さんは母さんに連絡を入れる。影響が出るかどうか、出るならそれが近場か遠方か。まずは母さんは、その見立てを行うのだ。そして遠方で影響が出る時、母さんが「時間稼ぎ」をするのだ。具体的な方法は「秘伝」なので俺も詳しくは知らない。ただ、小さい頃、「それ」を目撃したことがあって、その時母さんは、ディオラマみたいな物に何かの呪文を唱えていた。そしてそのディオラマに設置してあったビー玉より一回りぐらい大きな透明な玉、多分水晶だと思うんだが、それを持って、どこかへ出かけていた。その「どこか」は、近くのこともあるし、遠くのこともあった。どうやら行った先で、その玉を土の中に埋め込み、呪術を施すらしい。
 繰り返しになるが、具体的な呪術作法は俺も知らない。ただ、この呪術の関係上、母さんは日本国内のあちこちを飛び回っているのだ。


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